第715回番組審議会 6月6日(金)開催

〔出席委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、小松 陽一郎 副委員長、
北川 チハル 委員、高見 孔二 委員、
龍沢 正之 委員、中西 悠子 委員、
橋爪 紳也 委員、原 美和 委員、
松山 秀明 委員

〔当社側出席者〕
今村 俊昭 代表取締役社長、
岩田 潤 取締役、平栗 大地 取締役、
飯田 新 総合編成局長、
幾野 美穂 コンプライアンス局長、
宮沢 洋一 報道企画部長、西村 美智子 ディレクター、
木村 佳麻里 事務局長、米澤 公章 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『ABCドキュメンタリースペシャル 見えない傷あと~JR脱線事故20年~』
<事前視聴 2025年5月30日(金)25時34分~27時4分>

委員の主な発言

<番組の評価点>

  • 事故の当事者ではない人々の記憶を風化させないためにも、社会的意義を果たす番組だった。「生き残った人」といわれる被害者の胸に押し込めた20年、20年経っても消えない心の傷までしっかりと映し出していた。
  • 事故が起こったときに一番大事なのは、被害者とどう向き合うかということだ。ディレクターが寄り添いながら取材をして、被害者の心の中に入っていくことができていたと思う。
  • 20年前、10年前、今の映像で、被害に遭った人たちが年を重ねていく様子がきちんとわかる。その時々の言葉がちゃんと残っていて、それぞれの心境の変化、積み重ねた年月がしっかりとわかる。蓄積された映像をどう生かすかという意味でも優れた番組だった。
  • 『見えない傷あと』は、とてもいいタイトルだと思った。わかりやすくやさしく、そこに込められた思いが感じられた。被害者とその家族の生々しい日常を見ることで、改めて命の大切さや日常の大切さを感じることができた。
  • 加害企業が存在するときのマスメディアの役割は本当に大切だ。何回も取材することが、実は被害者たちの支えになっている、心のバックアップになっていることもあるかもしれないと思った。
  • 内容に引き込まれて1時間半の番組を見た。「見えない傷あと」の被害者をメインに作るのは、心を通わせることができたから可能だったのだと思う。

 

<番組の課題>

  • どのようにしてドキュメンタリーを多くの人に見てもらうかが課題だ。放送局の社会的な役割という、視聴率とは別の価値観があると思うので、配信や、映像祭などリアルな場を通して、きちんと取材していることをアピールできる機会を増やしてもらいたい。
  • あまり悲惨な映像を放送できない報道の限界についても考えさせられた。今回の番組はできる限界まで頑張っていたし、多くの人が無料で目にするメディアなので、そうした配慮は正しいと思うが、反面、時代が重なっていったときに、すべての人に正確に伝わるだろうかという懸念も感じた。
  • 事故を風化させないよう関西各局で連携するプロジェクトがあってもいいと思った。遺族の方に配慮しながら、局の連携などでアーカイブを作っていくことが大事だと思う。

番組制作側から

  • 事故から20年を機に、被害に遭った人たちはどうしているのか、どんな苦労があったのかを見つめ直して伝えたいと企画した。負傷した人の家族を取り上げることで、事故の重さ、深さ、つらさがより伝わるのではないかと考えた。これからも長く取材していきたい。

以上