第666回番組審議会 7月10日(金)開催
〔出席委員〕 |
〔当社側出席者〕 |
審議課題
『必殺仕事人2020』
<事前視聴 2020年6月28日(日)午後9時~11時4分放送>
委員の主な発言
<番組の評価点>
- 「振り込め詐欺」や「半グレ」集団とか、世相てんこ盛りで、細かい時代考証にとらわれていないところが、エンターテインメントとして楽しかった。仕事人のメンバーも演技が安定していて、東山紀之さんも松岡昌宏さんもコミカルな演技を危なげなくこなしていて良かった。
- 市村正親さんの悪役ぶりはやはり良かった。
- テーマ音楽が流れてきただけで自分の人生の何十年を思いだすくらい身体にしみついている感じ。勧善懲悪で、2時間がアッという間に過ぎた。シンプルイズベストの番組だった。
- 最近民放での時代劇が少ないが、時代劇は文化だと思う。舞台となる時代に関する知識の宝庫で、例えば江戸時代の風俗習慣とか背景にある文化的なもの、歴史もひっくるめて時代劇で見せるということができる。これからも「ABCテレビは、まだちゃんとした時代劇をやってる」という風だとうれしい。
- 2部構成にしていて、さらに何か起こる展開だったので最後までワクワクして良かった。市原悦子さんのナレーションがそのまま残っているのには感動したし、テーマ音楽も永遠。こういう特別な世界観が『必殺仕事人』にはあって、悪を成敗するのは『必殺仕事人』にしかできないことなので、より一層磨きをかけていってほしい。
- 『必殺』は、映像にすごくこだわっている。撮影されたシーンがきれいだ。今回特に印象に残っているのが、お母さんのたけが川のところで刺されたシーン。音楽に乗せてクルクル回ってるところが映ったり、カメラが上から撮ったりと映像にこだわってるなあというのを感じる。いつもこだわりのシーンがあって好きだ。
<番組の課題>
- 「仕事」(悪人を成敗する)のシーンが2時間に3回あることで、今回は「仕事」が軽くなってしまったのではないか。最後に集約しても良かったと思う。明と暗というか陰と陽というか、そこのギャップの面白さがもう少しあっても良かったのでは。
- 世相を反映しているのは良いのだが、今回は「オレオレ詐欺」と「引きこもり」と「半グレ」。根本的に「オレオレ詐欺」はこういう時代にはありえない。パッと今の話題を取り上げているだけだなあと感じた。
- ドラマにグッと来るものがないなと思った。おそらく『必殺』のひな型に物語を当てはめていこうとする難しさ故だと思う。
- 「仕事」の技の気持ち良さとかそれを底上げする演出がもう少し欲しいと感じた。リュウは剪定ばさみが殺し道具になっているが、道具としてのスマートさに欠ける。また、悪役を倒すのに手間取ったが、もっと仕事人としての圧倒的な力の差というか、カッコ良さを出してほしいと思った。
- 放送時間帯のこともあるので残虐にしろという意味ではないが、ブラウン管のテレビの時代と違ってデジタル放送で解像度の高い大画面で見ていると、殺陣だけの殺し方というのが嘘っぽく感じてしまう。血も出ないし、着物も切れないし、鮮明な映像なのでそれを頭の中でイメージし補完するのは厳しいのかもしれない。時代劇の良いところを残しつつ、現代の映像技術に合わせた発展をしてほしい。
- 昔は時代劇にレントゲンの映像を映すから面白かったが、伝統芸でも新しい工夫がいると思う。レントゲンはそろそろやめて次の最新テクノロジーの画像処理の何かで画面を作ってもらいたい。
- 今回は、女性の役が被害者だけみたいな印象だった。昔は何でも屋の加代とかしたたかさのある役で、女性の使い方がすごくうまかった。和久井映見さんは演技力があり、そういうことができるのに出番が少なかった。世の中の女性のポジショニングは随分変わってきているので、そのようなところをうまく取り入れても良かったのでは。
番組制作者側から
- 「ABCテレビといえば『必殺』」と言われるくらい、『必殺』はABCテレビの財産。今回は視聴率も良かったが、常に昔からの『必殺』ファンを満足させて、その上で新しい世代も取り込むという究極のテーマがある。今の時代に合った、若い人も見たいと思う時代劇は何だということをこれからも追求していかなければと思っている。
- 『必殺』を新しくしていく中での一つのチャレンジとして、去年と今年を比べるとテンポが全然違うという点がある。どんどんいろいろな場面が出てくるので、その辺がもしかしたら深く入っていけなかったと感じられたところかもしれない。作り手として、今回いただいた貴重なご意見はスタッフとしっかり議論していきたいと思う。
以上