第625回番組審議会は5月13日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、酒井 孝志 副委員長、
道浦 母都子 委員、星野 美津穂 委員、
橋爪 紳也 委員、淺井 栄一 委員、
高見 孔二 委員、小松 陽一郎 委員、
北川 チハル 委員

 

 

〔当社側〕
脇阪 聰史 社長、
松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、
岡田 充 編成局長、木村 光利 コンプライアンス局長、
吉川 知仁 企画戦略部長、熊田 容子 プロデューサー、
福田 篤 ディレクター、
戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『ワンダーアース4 生き物たちから学ぶこと』
<事前視聴 4月29日(金・祝)午後2時~5時53分放送>

番組の良かった点

  • 「きちんと地球とおつきあいしましょう。動植物と仲良くしましょう」という視点の大事さを、年に1回とはいえ14年間ずっと放送してきた。「朝日放送は良いのをやるなあ」という視聴者の気持ちのベースに埋め込まれるような番組なので、ずっと続けて欲しい。
  • 第一印象は、スタジオセットとか出演者の方々が豪華だなと思った。VTR映像も、特にナミブ砂漠は息を飲むほどの美しさで釘付けになった。ナレーションもカッコよく、映像の入り方にも工夫があり、良いものを見せてもらっていると感じた。
  • どの番組も似たようなスタジオセットが多いと言い続けてきたが、今回はかなり良いと思った。この番組のスタジオセットは年々良くなっていて、今までで一番良いと思った。
  • ナミブ砂漠のコーナーは一緒に探検しているような気がしたが、一番驚いたのは、1年間一滴も水を飲まなくても生きていられるサソリの話。人間もそこから学ぶことがあるのではないか、番組にふさわしいテーマだと思った。
  • 『生き物たちから学ぶこと』ということで、広大な砂漠の世界から身近なアリの世界まで取り上げていて、楽しくてわかりやすいラインアップだと思った。
  • 内容で面白かったのは、アリの話。多様性が重要という人間社会に通じる話への持って行き方が面白かった。特に働くアリは高齢の雌で全体の3割、働かないのが7割で、その3割だけを取り上げると、また3対7になっていくという法則はとても面白かった。
  • 未来医療の話で、ダチョウはアホだけど優れた抗体を作れるという話が非常に印象に残っている。また、ある種のクラゲの発光物質がガンの治療に役立つという夢のような話は、思わずスタジオと一緒に拍手していた。
  • MCの東野幸治さんと喜多ゆかりアナウンサーのやりとりが非常に楽しくて、それが他の出演者に伝播していた。温かい感じが全体としてあって、コンテンツもそんなにギューギュー詰めでもないし、少なすぎでもないし、ちょうど良い感じだと思った。
  • 東野さんをMCに起用したのは大成功だったのではないか。「自然環境」と言うと、割と堅苦しい番組になりがちだと思うが、東野さんのリードで、楽しく、気楽に見られた。
  • 『生き物たちから学ぶこと』として、厳しい環境の中でもたくましく知恵を絞って生き抜いていく実例を見て、自然には大きなシステムがあって、その中で生きていること自体、存在意義とか、役割とかがあるのかなと感じた。生き物を生かしている地球は神秘だし、まさにワンダーというのは、ちゃんと伝わったと思う。

番組の課題

  • 4時間は長すぎると感じた。生中継もなく、変化がなさすぎたのでは。VTRを見てはスタジオでおしゃべりの繰り返し。冒頭の「アリ」のコーナーも15分は長すぎる。あそこが長いから、全体の流れが悪くなり、4時間が長く感じられたのでは。
  • MCの東野さんが「65周年特番」というのをくどいほど言っており、そういうことかと思ったが、4時間はやっぱり長い。せいぜい3時間が限界。特番だから長時間にするという考え方は、本当にそうなのか。それよりも、もっと内容でインパクトを出すとか、事前のPRをしっかりするとかが本来ではないか。
  • 生放送の良さを感じられる企画、例えばスタジオのあちこちから生中継が入るとか、スタジオ内外で子どもたちを巻き込むようなワークショップを行い随時生中継する等がなかったので、生放送にこだわらずに、良いものをじっくり届ける方が良かったのでは。
  • 番組企画書には「次世代を担う子どもたちにこの番組を見て欲しい」と書いてあるが、それにしては「交尾」とか「精巣」という言葉が多すぎないか。「サメ先生の人生相談」コーナーでの相談内容にしても、内容が大人っぽい。普通の番組なら良いが、「次世代の子どもたちに見て欲しい」と言うなら、子どもたちに見せにくいような番組はいけない。
  • サメのコーナーで何度かあった「皆、大好き捕食シーン」という言い方に違和感を覚えた。生き物が生き物を捕えて食べることは、すごく重要な尊いこと。ちょっと趣味の良くない言い方だと思った。楽しく盛り上げるためだろうが、それを理解して受け流せる大人が相手ならともかく、子どもに見てもらって、地球を知り大切にする心を育むという番組であるなら、投げかける言葉にも配慮が欲しかった。
  • ネコのコーナーで、ネコからの愛され方云々というのは『生き物たちから学ぶこと』と違うのではないか。ブームなので取り上げたのかと思ったが、逆にネコの番組は他にいっぱいあるので、違う生き物でも良かった。ネコのコーナーでダレた感じがした。
  • ダチョウの話が面白かったのは、「ダチョウはアホ」というのと、「だけど、これだけ役に立つ」というのが、きれいにわかりやすく作ってあったから。アリの生態は、知っても、その後の話があまり関係なかった。全体にもっと「これが言いたい」ということを出して、そこを皆でしゃべると絶対にもっと面白くなるはずなのにと思いながら見た。
  • 「生き物たちの激ヤバ○○術」のコーナーは、学んではいけない反面教師として生き物たちの生態を紹介していたが、皆、種を存続させていくための生態。「これは反面で、こっちは良い」等と言うのは人間のこじつけで、そんなに『生き物たちから学ぶこと』にこだわらなくても良かったのではないか。
  • ワイプの入れ方が気になった。特にナミブ砂漠でリポーターの金子貴俊さんが感動に浸るシーンはテレビ画面という壁を忘れそうだったが、スタジオでの茶化すような笑いのワイプに興醒めした。VTRの音声とスタジオの笑いが重なって聞き取れない箇所があったのも残念だった。
  • ナミブ砂漠を取り上げていたが、環境問題でナミブはしばしば課題になっている。例えば映画のロケで生態系を傷めた等で。要は、「生き物が素晴らしい」だけでなく、人間が行く、カメラが入ること自体が課題であるということも絶えず伝えていかないと、「地球環境にやさしい放送局」というところがなかなか出ないのではないか。
  • この時期であれば、熊本地震と環境問題を絡める何かを考える余地があっただろうと思うが、その辺の熊本へのメッセージ的なものがなかった。
  • 朝日放送はCSR(企業の社会貢献)としてこの番組を放送しているはずで、「地球にやさしい放送局」ということをずっとこの間、掲げられているのに、その辺りのメッセージ性が足りない気がする。例えば途中のCMで朝日放送がメッセージを出すとか。
  • ワンダー博士の長沼毅広島大学教授が、他の出演者たちから一人離れて座っていて、別空気だったので、一緒に座ってもらった方が良かったと思った。あまりにも出番がなくて、ほとんどしゃべっていない。この番組に大事な先生なのだから、もうちょっと生かして欲しかった。
  • スタジオの雛壇がタレントばかりで、大学の先生は長沼教授一人だったので、専門的なやりとりが成立しなかった。視聴者はタレントの素朴な感想も聞きたいが、専門家同士の掛け合いみたいなものがあれば、情報量はもっと深く、多くなると思った。
  • 2003年から続けてきた番組で、『ガラスの地球を救え』というメインタイトルが消えたのはすごく残念。せっかく続けてきたのだから、もったいない。朝日放送としてずっと続けてきて、毎年しているということは大事なことなので、「ずっとやっています」ということをもっと説明して欲しいと思った。
  • ネタとか取材とか映像とか、ものすごく良い素材があって、それを朝日放送得意のバラエティの包丁で料理して、美味しいものができていると思うが、その包丁が素晴らしいからこそ、逆に「もう少し真面目な感じで」という意見もあったと思う。そういう意味では、次回に向けて包丁を複数揃えるとか、新しい料理の仕方を工夫して欲しい。

番組制作側から

  • 『ワンダーアース』というタイトルで4回目になる年1回の特別番組。それまでの『ガラスの地球を救え』で環境問題を考える番組から方向転換をして、地球とそこに住む生き物たちのすごさを伝える番組として続けてきた。
  • ちょっと目を向けると同じ地球上にこんな生き物の世界があるのだということを提示する番組。そこに当たって、テレビはエンターテインメントなので演出を考える。例えば、サメのコーナーも図鑑的ではなく、「人生相談」という切り口でやって、批判も含めて色々言ってもらえたのは、それだけ印象に残ったからではなないか。
  • 今回がいつもと違ったのは、MCを東野さんに担当してもらったこと。東野さんは、2006年『ガラスの地球を救え』以来、10年ぶりの出演。いつもは色々な生き物のことをVTR部分で伝えているが、スタジオトークでもっと語れることがないか、それには素晴らしいMCが必要と考え、東野さんに盛り上げてもらった。
  • 番組対象者に関して、次世代を担う子どもたちに伝えたいという思いは強いが、反面、その子どもを育てる親がちゃんとわかっていないから環境問題になっているのではないか、親にもちゃんと見てもらいたいという思いがあり、ちょっと大人寄りになってしまった。
  • 「交尾」や「精巣」については最初、悩んだ。でも、人間の命というのは、そういうところから育まれるから、これはいっそ言ってしまっても良いのかなと、思い切ってやってみた。結果的にどう受け取られたかは、きょうよくわかった。
  • 最初は『ガラスの地球を救え』で、環境を全面に出してやってきたが、このタイトル自体が番組を作る時の縛りになってきた。4年前から『ワンダーアース』という形で、生き物中心にやっていく方に舵を切ったが、やっている内容と『ガラスの地球を救え』という言葉が乖離しているのではないかという指摘も受けた。そこで今回、『ガラスの地球を救え』という冠を取ったが、きょうの審議で、「朝日放送がこれまでやってきた部分で、タイトルも大事」と再認識したので、来年に向けて色々考えたい。

以上