第560回番組審議会は、11月13日(金)に開かれました。
出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 渡辺 克信 社長、北畠 宏泰 専務、 福田 正史 取締役編成本部長、 田仲 拓二 取締役(広報・ラジオ担当)、 山本 晋也 編成局長、田中 俊行 制作局長、 森山 浩一 プロデューサー、 深沢 義啓 プロデューサー、本城 謙三 広報局長、 小関 道幸 事務局長、北本 恭代 事務局員 |
<以下 出席委員の意見 要旨>
- とても大事な、社会的な問題なので放送局の責務として、いかにこれを伝えていかなきゃいけないかということはあると思う。酒井法子容疑者の事件でこれだけみんなの関心がある時だったので、この時期に放送したのは、すごくよかった。
- この番組は私たち世代には、すごくスローな展開で現実を現実のまま見せてくれたなという感じがあるが、これを若者がどのように見たのかなというのは、ちょっと疑問に思った。
世間で若者が起こすいろんな事件なんかを見ていると、背景に、家族とか、親の育て方というのが問われる。私も麻薬に染まっていくこどもたちとかを見て、どこで間違っていくのかが分からない。現実を見せてもらっているんだが、どこが間違ったのかが分からないのが現実だ。 - 淡々と語っていく、事実を伝えていく中身で視聴者に考えさせていくという手法を取られたんだなと思った。視聴者がかなり考えるような仕組みにはなっていたというところが、面白かったがちょっと難しい。通常のドラマを見るような感覚で見ている方々には、別の見方もあったのかなというようなことを考えながら見た。
- リアルに描いて事実に寄り添っているはずなのに、全体として作り事のように見えてしまうという皮肉な現象が起きている。
- 主人公の身内に対する心の開け方が、あのドラマでは全然なくて、信頼感があるのは夜回り先生だけだった。あんないい先生には絶対というほど出会えないし、こっちからもあれだけメッセージを送るかなあと、そのへんで、これは非常にいい作品やけど、一つのつくりごとかなと、2回目見た時、そのように感じた。
全くフィクションにしてなくて、真実として書いてあるから、見ていて心を打ったが、やはりもう一押しほしい。夜回り先生以外に、もうちょっと身内で、おばあさんとか、近所の人とか。その渦中にいる女の子の心に対して、こんなときにはどうしたらいいのかという、家族の接し方が全然ヒントとしては出てなかったなと思った。 - 原作があっての話なので、それは仕方のないところなのかもしれないが、「うちはこういう家庭でないから大丈夫よ」というところにいってしまいはしないのか?みんなそれで線を引いていくわけで、自分は安全って。「芸能人じゃないし、うちは両親そろってるし」みたいなことでやっていくと、全然問題解決に至らない。そうした意味で、設定に少し疑問を感じた。
ある意味親の描き方が中途半端というのもあるが、ちょっと型通りであることが少し気になった。 - 「ABCこども未来プロジェクト」、これは非常に長いことやっておられるし、「いじめ」とか「いのち」とか、いろんな形でやっておられることに敬意を表したい。親には経験がない。だから、どないして教えるんかというのにリアリティがない。せっかく映像を使うてるのやから、方法論として何かないのか。いかに苦しんだかということのね。止めさせるのにはそういう方法しかないですよね。そこはリアリティが欲しい。
だから「それであなたの一生はだめになるよ」とかいう言い方が、親が経験していないだけにリアリティがないから、そこのところをもうちょっと、人の経験でもええから、映像で色々と社会に教えていただけたらなと思った。 - ドラマ仕立てにはあまりしてなくて、非常に著書に忠実に作られたのではないかなというふうな印象を持っている。エンタテイメント部門の方たちが作られたのに、ドキュメンタリー的にならないで、でも見せるところも作っていて、2時間たっぷり難しいテーマに取り組んで作ってくださった意欲に感謝している。そして非常にタイムリーでもあるし。
ドラマとして予定調和をさせないように作ったとしても、やはりどこかでハッピーエンド的なにおいがしないでもなかったので、主人公が復帰の道を選んで、その後どうなったかという続編を作ってもらいたい。あれからが大変なので。ドラマとしてはとてもよくできていて、寺脇さんも、片平なぎささんも「2時間ドラマの女王」よりもちょっとがんばってやってたなと思う。
更生した患者さんを追ったドキュメンタリーは見たんですが、ダルクという更生施設があって、酒井法子容疑者のときもたびたびダルクの人がコメントしていたが、そういう所があるんだということをもっと皆さんに紹介してほしい。いのちの110番と同じように、水谷先生以外に、薬物中毒に対していつでも電話できる所があるんだよと、ちゃんと薬物依存電話相談をやっていますので、そういうことをぜひメディアの力で普及していただきたい。 - 今回の作り方には大賛成だ。二人のプロデューサーが言ったことは、非常に意味深く感じた。視聴者に対して「現実を見つめてください」と言ってる。これでいい。ある意味で答えはない。だからそれしかない。そうすると、いみじくも、次から次へ、「どうしたらいいんだ」「行政は何をしてんだ」「行く施設はどこなんだ」「その施設は何をしてくれるんだ」となっていく。あのエンディングのシーンは自らの意思である施設へ向かう。そのときに水谷先生は、あえてそこでは入るところまでついていく。そこまでしか言わない。あのやり方しかないんですね。スタッフが現実を見据えて、そして視聴者が現実を見つめる。こういう作り方が私はこのドラマの最も効果的な、このテーマをドラマ化するうえでの最もいい作り方だと思う。
ある意味では作り手のほうも大変勇気のいる作り方だと思う。ウケ狙いで作るほうがむしろ手法がありますからやりやすい。これは解答がないから、そういう意味では投げかけるしかない。これだけ皆さんの議論が沸騰しただけでも成功。ドラマの効果。そういう意味で私は大変このドラマの作り手をほめたい。ドラマの構成をほめたい。非常によくできている。
以上