TCFDの提言への賛同表明
朝日放送グループホールディングス(株)は、気候変動問題を当社グループが直面する重要な経営課題の一つとして捉えており、TCFDが気候変動問題についての情報開示などを進める上で有効な枠組みになると考え、2022年5月にTCFD提言に賛同しました。
当社は、このTCFD提言に沿って、気候変動が朝日放送グループの事業活動に与える影響と対策について情報開示を持続的に進めていきます。
※ TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。
気候変動によって金融市場が不安定化するリスクを低減するため、G20(財務⼤⾂・中央銀⾏総裁会議)の要請を受け、2015 年12 ⽉、⾦融安定理事会(FSB)が立ち上げたタスクフォース。2017 年6 ⽉に最終提⾔を公表し、気候変動が事業活動に与える影響や、具体的対応・戦略等を情報開示することを推奨している。
TCFDに基づく気候変動対応に関する情報開示
朝日放送グループホールディングス株式会社(以下、当社と記載)は、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の情報開示要請に準じ、気候変動に関連するガバナンス、事業への影響と対策、リスク管理等について検討と対応を行っています。
当社では、取締役会より、サステナビリティに関連した課題の検討や対応の推進について委嘱された「サステナビリティ推進委員会」が設置されています。「サステナビリティ推進委員会」は、当社サステナビリティ推進担当役員を委員長とし、委員は、総務・人事・経営戦略の各担当役員、総務局長、人事局長、経営戦略局長、および、グループの主要な事業会社の各代表者等で組織され、サステナビリティ推進担当役員がその運営の責任を担っています。
委員会の下には「環境分科会」が配置され、気候変動対応に関するシナリオ分析、リスク・機会の分析、対応策の策定等を行い、委員会へ提言をしています。委員会は、四半期に約1回の頻度で開かれ(2021年度:5回開催)、(2022年度:4回開催)、(2023年度:3回開催)、環境分科会からの提言等をもとに気候変動に関する現状の把握と対応を検討し、それらは執行役員会を通じて取締役会に報告・付議されています。取締役会の審議を経て、執行役員会がサステナビリティ推進委員会或いはグループ各社に指示をしています。
■体制図
TCFDが推奨するガイダンスに則り、2040年までの事業環境をシナリオ分析の手法を活用し、気候変動が当社に与える影響を分析・評価しています。また、影響があるとするリスクや機会に対して、どのように対応をすべきか検討を行っています。
1)シナリオ分析の概要
対象範囲 | グループ連結対象企業 |
時間軸 | 現在~2040年 |
シナリオ構築 | (ⅰ)【今世紀末の地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えるシナリオ(1.5 ℃シナリオ)】 参照情報
参照情報
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2)気候変動に関連して想定される事業環境の変化
(ⅰ) 1.5 ℃シナリオ(気候変動への緩和)において想定される事業環境の変化
温室効果ガス排出量削減に向けたより厳しい規制等が企業に迫られ、それにより大気中の温室効果ガスの増加スピードは下降していきます。現時点の地球の平均気温は産業革命以前の水準から既に1.1℃上昇しており、さらに2040年ごろの近畿地方の平均気温は現在より0.5℃から1℃程度高くなり、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の2倍程度になります。
気候変動に対する社会の関心の高まりから視聴者・リスナー等やクライアントの行動変容や社会変容が進み、気候変動対応を行わないメディアには選別も行われるようになります。クライアントの事業内容にも多様な変化が起こり、それに伴い、既存クライアントのCM出稿計画の変更や新規クライアントのCM出稿が増えていきます。
電気料金は長期的には横ばい或いは低下しますが、再生可能エネルギーへの転換期には短期的な需給バランスの崩れにより高騰することがあります。
(ⅱ) 4 ℃シナリオ(気候変動への適応)において想定される事業環境の変化
特に厳しい温室効果ガス排出の規制がないことから、大気中の温室効果ガスは加速度的に増え続け、2040年ごろに近畿地方の平均気温は現在より2℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の4倍程度になります。激甚化する風水害に対して政府の対策がより強化されていきます。気温上昇により、熱中症搬送者数は現在の2倍程度に増加するとともに、これまで少なかった蚊媒介の感染症なども増えていきます。
化石資源の価格及び電気料金は上昇していきます。また、風水害の激甚化による被災頻度が高くなり、事業のイレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が増加します。特に、暴風雨と高潮により、堂島川河畔の本社の浸水の危険性が高まります。
3)気候変動対応に関連する主なリスクと機会
1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ下における事業環境の変化から、発生する可能性のあるリスクと機会を抽出し、推測される財務への影響度について検討を行いました。その結果、当社の経営に大きく影響を及ぼす可能性があると推測されるものが次表となります。
シナリオ分析からは、リスクに関しては当社の事業のうち特に住宅展示場事業、ゴルフ事業において長期に発現可能性のある物理的リスクがあることが分かりました。一方、機会に関しては世界的な気候変動対応の潮流の中で、視聴者・リスナー等やクライアントともに意識、事業が変わることにより、番組内容、その提供方法など多岐にわたり新たな事業機会があることが分かりました。当社では、それらのリスク・機会に対して適切に対応していくために、それぞれについて取り組み方針を策定しました。
尚、ここでの「短期」「中期」「長期」とは、「短期」は直近1~3年程度、「中期」は4年~10年程度、「長期」は11年~約20年程度と定めています。また、リスク分類はTCFDに沿った分類を行っています。
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4)気候変動に対する緩和・適応へのレジリエンス
気候変動を緩和する1.5℃シナリオと気候変動が激しくなる4℃シナリオの2つのシナリオに対して当社の事業を分析した結果、政策・法規制リスク、物理的リスクにおいて比較的影響度の高い課題が抽出されました。政策・法規制リスクに対しては、既に対応を進めております。また、物理的リスクに対しては、発現時期が中期、長期であることから、いずれも今後の対応により回避できるリスクであると考えられます。従って当社は気候変動に対して一定のレジリエンスを有していると判断しています。
5)温室効果ガス排出量の削減計画
(ⅰ) Scope1,2
2022年1月に脱炭素社会への貢献と対応を行う「ABCグリーン宣言」を発表しました。主な取り組み内容は、当社の使用電力について(Scope2)、2022年4月に、大阪本社屋で使用する電力を実質 100%再生可能エネルギー由来に変換するなどし、2025年には、CO₂フリー電力化の実現を目指すものです。また、2022年4月よりオフィス・スタジオ等の照明LED化を開始し、2025年に作業完了することで、電力量削減によるCO2排出量削減に貢献します。既に2013年より進めている太陽光発電事業は今後も継続します。
なお、Scope1・2のエネルギー使用量とガス排出量はデータ算出を進めており、それによるより具体的かつ精緻な削減を行っていきます。
(ⅱ) Scope3
当社の事業活動に関連するサプライチェーンで排出される温室効果ガスの排出量等(Scope3)のデータ集約も段階的に対応を進めていき、その内容は、適宜適切に情報開示を行っていく方針です。
気候変動対応を含みサステナビリティ全般にわたるリスクの抽出や対応策の検討はサステナビリティ推進委員会及びその下部組織である環境分科会が中心となって行います。TCFDの対応についても環境分科会でシナリオ分析などを進め、サステナビリティ推進委員会に報告しております。シナリオ分析を含めた当社のリスク関連の情報は、グループ全体のリスク管理を行う執行役員会にも報告されます。執行役員会ではグループ全体の主要なリスクを検討し、必要に応じて事前予防策の検討や実施の管理を行っています。執行役員会で検討された内容は、取締役会に報告され審議されます。取締役会審議を経て、執行役員会が、サステナビリティ推進委員会或いはグループ各社に指示が行われます。
1)温室効果ガス排出量の削減に関する指標と目標
(ⅰ) Scope1,2のこれまでの温室効果ガス排出量の実績は以下の通りです。
Scope3は現在、データ算出作業を行っており、算出が完了次第開示する予定です。
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※ ABC本社、高石・生駒送信所、ザ・タワー大阪無線中継室、中之島フェスティバルタワー無線中継室、中継局(総合)、神戸・京都支局、abcd堂島ビル(5F,6F)、東京オフィス、名古屋支社、ABCアネックス
※※データは、経済産業省・総務省・国土交通省への報告数値。電気については、環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数で算出。
Scope1,2の削減目標数値は、現在社内調整中であり確定後に追って開示します。
(ⅱ) 当社高石市太陽光発電所(※)による温室効果ガス排出削減貢献量(太陽光発電事業による再生可能エネルギー電力の供給量の数値)の実績は以下の通りです。
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※高石市太陽光発電所:高石ラジオ送信所内(大阪府高石市綾園四丁目)
※※環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数(関西電力)で算出。
2)リスク・機会の管理に必要な指標と目標
リスクや事業機会の管理に必要な指標、目標値は、それぞれのリスクや機会への具体的な対応策が決定された後に設定する予定です。