第674回番組審議会 5月21日(金)開催

*朝日放送テレビ出席者と各委員をリモート会議システムでつないで開催

〔出席委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、淺井 栄一 副委員長、
北川 チハル 委員、小松 陽一郎 委員、
杉林 浩典 委員、高見 孔二 委員、
橋爪 紳也 委員、原 美和 委員、
星野 美津穂 委員

〔当社側出席者〕
山本 晋也 代表取締役社長、
小倉 一彦 取締役、今村 俊昭 取締役、
幾野 美穂 総合編成局長、
西澤 萠黄 コンプライアンス局長、
藤田 貴久 プロデューサー、平岩 和之 ディレクター、
星 信幸 事務局長、石原 康男 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『追跡スペシャル 暗躍する半グレの全実態』
<事前視聴 2021年5月9日(日)午後4時25分~5時25分放送>

委員の主な発言

<番組の評価点>

  • 警察の24時間とか取り締まる側からの取材はよくある。それらと違って取り締まられる側に焦点を当てた番組はそんなにない。半グレグループに1年かけて入っていったことには、すごい度胸を感じた。
  • これだけの時間をかける取材班の粘りや、それにゴーサインを出したプロデューサーの姿勢も素晴らしい。
  • 時代が大きく揺れ動いている時に、それまで目立たなかった問題が目につくようになったり、新たな問題が浮かび上がったりするのを見逃さず、1年前から密着取材した取り組みが素晴らしい。暴力団の組員から半グレグループメンバーになっていく流れ、刑務所から出ても行き場のない人たちがいとも簡単に加わってしまう経緯など、簡潔に淡々と描かれていた。半グレを「ウイルスのよう」と称したが、その脅威にしっかり警鐘を鳴らしていると感じた。
  • 犯罪に手を染める人たちが、そこしか居場所がなかったということがよく伝わった内容だったと思う。そういった悪循環や犯罪集団に身を置く切なさを、番組はうまく取り上げていた。
  • 協力雇用主の方は、彼らと真正面で向き合い彼らの気持ちの中に入っていくという部分があって、それがみんなに伝わっていると思う。そこをうまく映像化したのは素晴らしかった。更生の問題について少し宿題を残しながらという形でまとめているのは、良いなと思った。


<番組の課題>

  • こういう裏社会の実態を描く番組は、視聴者がそこに没入できるかというところが重要。特にディレクターと取材相手との間合いが、一体感になってしまっていないか気を付けなければならない。そのためには、もう少し突っ込んだ質問があったり、取材先にアプローチする過程を示したりすると良かったと思う。
  • 一般の人には見えない闇の部分を見せていく番組なので、制作も葛藤があったのではないかと思うが、視聴者にはどのように受け止められたのだろうかということは気になった。警察や専門家などの見解があっても良かったのではないかと思った。
  • 暴力団と半グレの対比で、暴力団側がオレオレ詐欺をするぐらいならインスタント麺で我慢するとか言っていたが、暴力団にもオレオレ詐欺をやっている者はいるので、線引きをクリアにし過ぎているかなと思う。
  • 刑務所を出ても受け入れ先がないから結局半グレに戻るということがわかった。ただ、番組で取り上げたことが半グレの宣伝になってしまわないか。また、犯罪を黙認しているように感じるところもあった。
  • これを見て何を知ってほしかったのか、何を思ってほしかったのか、番組の目的がもう一つよくわからなかった。私たちが半グレの被害者にならないために警鐘を鳴らす番組だとするならば、そのメッセージ性はなかったように思う。
  • 半グレをよく描き過ぎているのではないかと感じてしまった。一見すると言葉づかいも結構しっかりしているし、働いているようにも見えるが、あれは半グレの実態ではなく、もっと怖い世界じゃないかなと私は思う。
  • 後半の協力雇用主の話だが、そういう人たちは頑張って更生に協力しているので、そこをちゃんと取り上げて一つの番組にするくらいのことにしてほしい。

番組制作者側から

  • 最近は、我々が想像で描いている半グレからはかなり実像が変わってきているのではないか、わかりにくい存在になって、我々の身近にまで近づいてきているのではないかということが起点になり、取材活動に入った。
  • 取材対象に近づきたいというところはあるが、反社会的勢力であるので、極力一緒にいる時間を最小限にしていた。インタビューが終わったらすぐに立ち去る。その場の取材が終わったら、そのポイントで立ち去るという距離の取り方は、いつも心がけていた。
  • 民放では、ドキュメンタリーは深夜や早朝に放送されることが多いが、今回日曜日の夕方という多くの人が見やすい時間に放送した。

以上