第669回番組審議会 11月20日(金)開催

〔出席委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、淺井 栄一 副委員長、
岡村 邦則 委員、北川 チハル 委員、
小松 陽一郎 委員、高見 孔二 委員、
原 美和 委員、星野 美津穂 委員

〔当社側出席者〕
山本 晋也 社長、
清水 厚志 取締役総合編成局長、小倉 一彦 取締役、
藤田 貴久 報道企画部長、西 一樹 映像・編集部長、
星 信幸 事務局長、石原 康男 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『笑顔の村』
<事前視聴 2020年10月25日(日)午前10時00分~午前11時15分放送>

委員の主な発言

<番組の評価点>

  • 過疎の問題がしばしば取り上げられる昨今、移住者が多く集まるこの色川地域を取り上げた意義は大きい。人間にとって豊かさとは何だろう、幸福とは何だろうという問いかけをもらった気がした。
  • 絵に描いたような風景、美しい集落、美しい棚田、澄んだ空気が映像からも伝わってきた。四季折々変化する自然の中で子どもたちが伸び伸びと暮らす様子が印象的だった。
  • 全体を通して余計なナレーションがなく、そこに住まう人々のありのままを伝えようとしているので、カメラの目線が近いというか、知り合いのような近い目線で感じることができた。賞を取られているだけあって、素晴らしい映像だった。
  • 地域の誰もが分け隔てなく地域の子どもたちを育てるという風景を懐かしく感じた。私が子どもの頃は、大阪の都心や下町でも日常であったが、そのような経験を経ていない人には、画期的なことなのだろうと思う。
  • いちばん心を引かれたのはやはり人の姿。子どもたちが人懐っこく伸びやかで、お母さんが明るく元気でいられるのは、家族、ご近所、地域との関係がうまくいっているからだろう。色川地域が、移住者受け入れに根気強く取り組んできたからこそ、皆が笑顔になれるような効果的なシステムが確立されていったのだと思う。
  • なぜ移住者が多く来るのか答えを探そうとして見ていた。キーパーソンという視点から見ると、移住者の女性と優しいご主人、あのような若い人がそこに惚れて一生懸命頑張るのと、それを受け入れるおじいちゃん、おばあちゃん、全員ではなくても、そういうキーパーソンがいたら実現するのだろうなと思った。
  • 移住者との細かい面談があることにすごく驚いた。こういう取り組みが双方にとってとても大事だということがわかった。移住者にとっては、不安を取り除いてもらうものになるのか、あるいは考え直す機会を与えられているのか、とても大切な仕組みだと思う。こういう細かい配慮があるからこそ、この地域が残っていっているんだと思う。
  • 過疎の問題は各地にあるが、色川地域はシステム的にも人材的にも本当に良いサイクルになっているなと感じた。世話役と移住者で面談ができ、公共施設に1年住んで気に入った地区を確認できる流れが功を奏しているのかなと感心した。すごく良い例を見せていただいた。
  • この番組にはネガティブなところがほとんど出てこない。医療はどうなっているんだとか、出産の時はどうするんだとか、そのようなことが番組を見ている時には気にならず、後でそういうところがなかったなと思ったが、なくても成立している番組だった。良い意味で、こういうドキュメンタリーの見せ方もあるのだなと思った。


<番組の課題>

  • 移住してきたけど、出ていった人もいる。番組では、どんな人が出ていったかということを言っていない。同じ考えの人が集ってあの地域ができているのか、あるいは、そういう人だけを集めたのか。極端に言うと考え方の違う人は住んでもらわなくても良いということなのか。その辺が少し気になった。
  • 地域の皆さんと放送局側との良い関係があることがうかがえる。10年、20年と継続して取材をし、本番組に登場した皆さんのその後をフォローしていただきたい。例えば移住者の子どもたちが、都会の学校を卒業したあと、色川地域に戻るのかどうかといった後日談を見たいと思った。

番組制作者側から

  • 理屈や解説はあえて省いているのだが、作り手としては小さなコミュニティが素晴らしいという思いもあって、大量生産、大量消費の無駄が言われている中で、このコミュニティに学ぶことはすごくたくさんあると思う。例えば大根がとれたから食べてとか、物々交換とか、プラスチックごみもほとんど出ない。見方を変えると今の社会が進むべき道の最先端を走っているというようにも見えるのではないだろうか。
  • 最初は、テレビ取材が嫌いな人が多いように感じたが、地域の人とただ挨拶を交わすだけでなく「天気が良いですね」とか、ちょっとした雑談を地道に繰り返していった。また、不満を言ってる人がいれば、その人の所へ行って、「こういう感じで取材します」と、きちんと説明した。このようなことに結構時間をかけた。

以上