第616回番組審議会は6月12日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、酒井 孝志 副委員長、
道浦 母都子 委員、星野 美津穂 委員、
橋爪 紳也 委員、淺井 栄一 委員、
高見 孔二 委員、小松 陽一郎 委員、
池内 清 委員、水野 由多加 委員

〔当社側〕
松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、
岩田 潤 編成局長、岡田 充 コンプライアンス局長、
橋本 祐子 ラジオ局長補佐、藤井 武夫 プロデューサー、
戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

ラジオ番組『三木鶏郎に挑む! 平成の仕事師たち』
<事前聴取 5月24日(日)午後8時~9時放送>

番組の良かった点

  • スタジオの、お茶目で辛口なキダ・タローさんと真面目で誠実そうな伊藤アキラさんの相反する性格と、ヒロド歩美アナウンサーが素晴らしく、3人の化学反応が起こっているようだった。
  • キダさんのおかげですごく聞きやすかった。キダさんが、途中で茶々も入れていたが、すごく真面目に、三木鶏郎さんのことを天才だと言っていた。もっとキダさんに語ってもらったら良かった。若い人たちも、キダさんの話ならわかりやすいのでは。
  • スタジオの3人はじめ、ダークダックスのゾウさんこと遠山一さんや中村メイコさんら、出てくる人が非常に良いバランスだった。まだ日本が貧しかった子ども時分から、だんだん豊かになっていく時代がパッと浮かんでくるように感じて楽しかった。
  • ヒロドアナウンサーは、三木さんやその作品を全く知らないのに、上手にキダさんたちとしゃべっていた。
  • ヒロドアナウンサーと遠山さんとの合唱が面白かった。合唱の後で、ヒロドアナウンサーがキダさんに怒られるところも面白かったが、合唱はそうやって聞くのかという発見もあった。
  • 番組の流れや構成がすごく良くできていた。冒頭に出てきた、三木さんの曲は知っているが本人のことは知らないという一般リスナーの反応が、まさに私と一緒で、番組導入部の流れがすごく良いと思って聞いた。
  • 作者は忘れられても作品は残っているということが凄いと思った。「明るいナショナル」、「くしゃみ3回、ルル三錠」、「牛乳石鹸、良い石鹸」など、すぐに音楽が浮かぶ。こういう純粋にストレートな言葉で、力のあるCMを作っていた人がいたのを凄いと思った。
  • オンタイムでラジオを聞いて、すごく早く終わったなと感じて楽しかった。ただ、情報量が多い。三木鶏郎さんが造船疑獄の佐藤栄作自由党幹事長(当時)を風刺したために番組を辞めさせられたという話もあり、かなり集中して聞かないといけないのかなというのがあった。
  • 非常に密度が濃かった。1回聞いただけでは、それはなかなかわからなくて、録音して2~3回聞くと、また楽しい。こういう感じなので、どういう風に残していくかというのは大事かも知れない。
  • 最後にキダさんと伊藤さんが、三木さんのCMを作るのが面白く、全体の流れは良いと思った。
  • エンディングも良かった。三木さんの生前の声と遠山さんのインタビューを交互に出して、まるで2人が会話しているかのような終わり方にしていた。そういうところも含めて全体の構成もディティールも上手かった。
  • テーマソングという意味では民放番組史になっているし、CM史になっているし、特にこの手の番組はNHKにはできないので、値打ちがある。1回で終わらせないで、『ABC放送文化スペシャル』などのシリーズにして、テレビやネットでも展開したらどうか。
  • こういう番組は、テレビの方がCMの画もあってわかりやすいかも知れない。テレビ、ラジオを通じて、朝日放送ゆかりの人の節目ごとに記念の特別番組を考えていけば、毎年1本は作れるのでは。スポンサーもついて来ると思う。今回の番組は、その試金石になる。
  • こういう番組は、ラジオが大事にしている世代に向けて作れば良いと思う。功績のあった人たちを取り上げていくことがすごく大事だし、続けていくことが大事だと思う。
  • ヘビーローテーションというか、曲をラジオによって全国ヒットにするという考え方は、ABCラジオが日本で最初にやった。それが『ABCホームソング』という番組。朝日放送のDNAは、元々ラジオから来ていると思うので、何らかの形で継続していけば、若い人がそれを生かして再びヒット作を生み出すのではないか。

番組の課題

  • 三木鶏郎さんは朝日放送の草創期にご縁があったとのことだが、今回の番組で朝日放送との関係をきっちり位置付けるべきではなかったか。後々この番組そのものがアーカイブ的に意味を持つかも知れないので。
  • タイトルの「挑む」とか「平成の仕事師たち」とは一体何だろうと思った。キダ・タローさんたちのことなのか。しかし、キダさんたちの年代なら昭和ではないか。しかも「何で挑まなければあかんのか」と思ってしまった。
  • オープニングで三木さんのCMソングを3曲しか流していないのに、「これらを全て作ったのは……」というナレーションが入る。せめて「全部で600曲も作った人」などと言わないと、三木さんの凄さが伝わらない。
  • 三木さんを取り上げるなら、どんどん歌を流した方が良かったのではないか。CMソングの「キリンレモン」などは出てくるが、「ルル三錠」や「京阪特急」などはなかった。CMソング以外にも「僕は特急の機関士で」などはなかった。有名な曲を省いているのがちょっと不親切。
  • 朝日放送としては、もっと大阪のCMソングを前に出すべきだったのではないか。「京阪特急」「南海電車」「近鉄特急」「田辺製薬」など。『鉄人28号』主題歌前の「江崎グリコ」の「グリコ、グリコ、グ~リ~コ~」というのも前に出して欲しかった。
  • 三木さんの作品を、昔の音でたくさん聞きたかった。CMソングのメドレーが入るというので期待していたが、生バンドによる演奏だったので、「こんな豪華な」という話も出ていたが、私自身は「えっ?」という感じがした。
  • 三木さんは、東京帝国大学法学部まで行ったが、司法試験に落ちて音楽家になった。それは音楽の天才だったからということで終わっているが、天才が何で花開いたのかを知りたかった。
  • 三木さんは、言葉をメロディーやリズムに上手に乗せているところが凄いということを言って欲しかった。三木さんの歌の良いところ、凄いところの話が足りなかった。
  • CMソングの概括などを冒頭でやった方が良かったのではないか。要は三木さんから誰に継承され、今どうなっているのか。大滝詠一さんはじめ、CMソングで有名だった人たちの中で位置付けるということをしないと、流れた曲が懐かしいと思わない若い人たちは途中で聞かなくなるのではないか。
  • 若い人たちがどう聞いたかというのが一番気になった。番組資料に「三木さんの技術を受け継いだ弟子たちが沢山いる」と書いてあったが、インタビューされていたのはダークダックスのゾウさんこと遠山一さんだった。もっと現役で活躍中の人にもインタビューした方が良かった。
  • 最後にキダさんと伊藤アキラさんが、三木さんのCMソングを作って生演奏したのは、とても面白い企画だったと思うが、聞いている人に支持されたのかどうか気になった。
  • 三木さんが造船疑獄の佐藤栄作自由党幹事長(当時)を怒らせたために番組が終わり、NHK会長も辞めたという歴史がある。今日でもNHKやキー局が自民党に呼ばれるという問題がある。三木さんを通して、放送局と外圧の問題を掘り下げることができたら面白かったのではないか。

番組制作側から

  • 三木鶏郎さんは、民間放送の開局と同時に日本初のCMソングを作った方で、朝日放送とも縁が深い。当社10年史に「NHKが生誕の地であるならば、朝日放送は第二の故郷である」という一文を寄せているほどで、代表作のミュージカルオペラ『かぐや姫』はじめ、番組音楽やCMソングを多数作っていただいた。その三木さんに恩返しをしたい、さらに我々後輩が三木さんのDNAを少しでも現代に蘇らせたい、そんな思いからこの番組を制作した。
  • 当社と三木さんとの関係は、一般リスナーにとってはあまり関係がないと思い、紹介するのを抑えた。それよりも三木さんの作品をより出したいという思いがあった。
  • オープニングの3曲は確かに少ないが、あれ以上入れるとバランスが悪くなると思い散らした。番組の途中で「仁丹の歌」や「田舎のバス」などを入れてという風に。曲を紹介して、その説明という流れがマンネリにならないようにした。
  • キダ・タローさんと伊藤アキラさんが作った三木さんのCMソングがリスナーから支持されたかどうかはわからないが、三木さんは色々な電鉄会社のCMソングも作っていて、番組放送後、南海電鉄や近鉄から、三木さんの事務所を紹介して欲しいという問い合わせがあった。また三木さんのご遺族からは「嬉しかった、感動した」というお声をいただいた。
  • 今回の番組には、ラジオでは珍しく大人数が関わった。普段はそれぞれのレギュラー番組を制作しているスタッフが、一丸となって良いものを作ろうという思いを集約するにはどんなタイトルが良いかというので、我々は挑戦する立場だから、これをテーマに『平成の仕事師たち』とした。キダさんら昭和の人たちにおんぶに抱っこになったところはあったが、行間に我々の思いを込めた。
  • 最近は音楽番組を生演奏でやる機会がすごく減っている。今回、生バンドを使ったが、こういうことを定期的にやっていけば、技術部も音楽収録のノウハウを引き継いでいけるのではないか。これからも単発番組の中で、どんどん新しいことと古いことを同時にやっていけたら良いと思っている。

以上