第615回番組審議会は5月8日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
|
〔当社側〕 松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、 岩田 潤 編成局長、岡田 充 コンプライアンス局長、 辻井 学 スポーツ局長、三好 康嗣 スポーツ部長、 赤塚 欣也 プロデューサー、 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
『東京タイマー2020』
<事前視聴 2月21日(土)深夜1時19分~1時49分放送>
番組の良かった点
- 2020年東京オリンピックで活躍するであろうアスリートを紹介していくのは、「こども未来プロジェクト」とも合っているし、朝日放送らしい良い番組だと思う。
- 今回は女子飛び込みの板橋美波選手という中学3年生を紹介していたが、見ていて楽しかったし、応援もしたくなる。将来活躍するであろう選手の今を目撃しているという特別な感じもある。東京オリンピック自体も盛り上がるのではないか。
- スタジオにアナウンサーを入れずに、織田信成さん、高橋みゆきさん、田中理恵さんという3人の元オリンピック選手のフリートークだけで進行するのがすごく良かった。3人が力まずに自然にしゃべっているのに好感が持てた。
- スタジオのセットが工夫されていた。意匠権の関係で五輪マークが使えない中で、見る人に五輪を連想させるような円を多用したセットで、ある角度から見たら輪が重なって見えるデザインが良かった。
- 織田さんが板橋選手の取材に行って、トレーニング場の床に座って二人で話している場面が素晴らしかった。スポーツをやっている者同士が「悩んでるねん」「どうや」と言って、織田さんがお兄ちゃんとして支えてあげている感じが良かった。
- 織田さんが、飛び込み台を体験する場面では全く普通の人になってしまい、アスリートの違う一面が見られたのも面白かった。
- 3人の元オリンピック選手の苦労とか経験から出るコメントにはすごく説得力があり、重みがあった。特に織田さんが板橋選手に問われて語った「(失敗した時には)すぐ忘れること」、「(オリンピックは)夢の舞台と思っていたけど、闘う舞台だ」という言葉にアッと思った。
- 一番心に残ったのは、アスリートにとってオリンピックがどんなに大事か、どんなに目標かということ。3人の元オリンピック選手のトークは人選によってうまくいくし、本題とうまく組み合わされれば、この番組の目玉になるかも知れないと思って見た。
番組の課題
- 非常に楽しくスッと見た。ただ、何度もやっていくと同じパターンの話にならないか。
- これから同種の番組が増えていくと思われる中で、何をどう差別化していくか。トークだけで持つのだろうかという不安がある。
- 元オリンピック選手の3人をどのように選ぶのか。今回のテーマの飛び込み種目で、体操とフィギュアスケートは同じような困難度のスポーツといえるが、バレーボールはどうか。その辺の共通項を浮かび上がらせるような話を専門のMCがリードした方が、もっと深いものになったのではないか。
- 女子飛び込みで初めて109C(前宙返り4回転半、抱え型)という技を飛ぶ板橋選手を取り上げていたが、109とは何か、Cとは何かという疑問の答が全くなかった。もう少し技術に関する説明があった方が良かった。
- 板橋選手の両親は柔道選手で、本人も柔道をやっていたそうだが、いつ頃から飛び込みに移ったのか、飛び込みの魅力をどこに感じたのか、柔道のおかげで脚力が強くなったのかなどの話も欲しかった。
- 番組最後の飛込国際大会派遣選手選考会の場面で、板橋選手は優勝を逃し、板橋選手が所属するJSS宝塚スイミングスクールの一つ年上の選手が勝った。要は取り上げた選手が負けて、彼女と親しいはずの選手が勝ったのに、そのことの紹介は番組上、全くなかった。
- 女子選手は5本違う技の飛び込みをやるそうだが、飛込国際大会派遣選手選考会の場面で、板橋選手は2回目に失敗し、3回目に成功。織田さんの話を思い出し、気持ちをリセットできたからとナレーションが入る。しかし4回目の109Cは失敗。5回目はどうなるのかと思って見ていたら、5回目の映像は全くなかった。織田さんの話もあったので、そこは気になった。
- 一人の選手だけを取り上げるのではなくて、ライバルと一緒にやっていくような、そういう組み合わせがあると良い。競争していて、ある時はこっちが勝った、その次はあっちが勝ったという描き方。高校野球番組でよくやっているものを応用して、他局にはできない、朝日放送だけというストーリーが欲しい。
- スポーツというのは、どういう風に取り上げても、コンテンツとしては素晴らしい。人ということに注目すれば、勝っても負けても見ている方はすごく感じるものがある。選手が、どこでどう挫折して、オリンピック以外のことでそれをどう乗り越えていったかなども含めて追いかけるのも一つの手法。色々な発展形で色々な人を取り上げて欲しい。
- JSS宝塚から何故多くの優秀な選手が出てくるのかを知りたかった。JSS宝塚を切り盛りしている馬淵良さん、かの子さんご夫妻や、中国から帰化した息子の馬淵崇英さんの人となりなど、日本の飛び込み種目の中心地としての話があっても良かった。
- 東京オリンピックは、50年前に比べて盛り上がりに乏しい。特に関西には「東京でやること」という意識がある。そういう意味で、関西出身の選手を関西出身のメダリストが紹介し、関西から見た東京オリンピックを盛り上げるということを是非やっていただきたい。
- 関西の選手と同世代の若い人たちに関心を持ってもらえるように、SNSなどをうまく使って番組を盛り上げていくということも考えられるのではないか。
- 今、4K・8Kを使ったパブリック・ビューイングの最先端で何ができるかを各社が競い合っている。今回の番組の映像も素材として4Kに耐えられるような作り方を目指すべきで、それに向けてスポンサーをつけていくという発想があって良い。
- 将来に対して、2015年の時点から色々な選手を取り上げていくのは、ものすごく貴重な映像アーカイブスを持つことになる。ただ、そういうことが単発に見えるともったいない。もっと貴重な文化財を作っていることを視聴者に感じさせると良い。
番組制作側から
- この番組で大切にしているのが、オリンピックを経験したアスリートが実際に若手選手のところに行って取材するということ。今回は、織田さんが板橋選手を取材したが、オリンピック選手と触れ合うことで、若手選手に成長してもらいたいという思いがある。
- スポーツ番組でいつも悩むのが、技術とその他の部分のバランス。例えばフィギュアスケートのような採点競技で、何が良かったか良くなかったのかというのを突き詰めて、技の種類の話に時間をとられてしまうと、スタジオのおしゃべりが減ってしまう。今回は、109Cという4回転半、抱え型というわかりやすい技を目指しているということで、説明は省いている部分がある。
- 飛込国際大会派遣選手選考会の場面では、私たちも予想していなかった結果で、痛恨の思いでエンディングを迎えた。板橋選手は、109Cが成功していれば断トツだったが、成功しなければフィギュアの4回転と一緒で全く加点がない。優勝したのは、確実に点を取る選手。今後は、もう一人の選手の取材もちゃんとしなければと反省している。
以上