第614回番組審議会は4月10日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
酒井 孝志 副委員長、道浦 母都子 委員、
星野 美津穂 委員、橋爪 紳也 委員、
淺井 栄一 委員、高見 孔二 委員、
小松 陽一郎 委員、池内 清 委員、
水野 由多加 委員

 

 

 

〔当社側〕
脇阪 聰史 社長、
松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、
岩田 潤 編成局長、岡田 充 コンプライアンス局長、
大島 尚 報道局長、藤田 貴久 報道企画担当部長、
木戸 崇之 ディレクター、
藤井 容子 テレビ営業部主任、
戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『ナゾ解きガラシャ・明智光秀』
<事前視聴 2月28日(土)午後4時~4時55分放送>

番組の良かった点

  • 1時間がものすごく楽しく、漫画やナレーションをうまく使って、ダジャレが多く軽すぎるという気がしないでもないが、若い感じの番組が狙いだと思うので問題ないと思うし、丁寧に取材や撮影をしている良い番組だと思う。
  • 休日に見るテレビとして、リラックスできるし、歴史の切り口が面白いし、本当に楽しく見た。また、やくみつるさんと村井美樹さんの大阪弁のベタベタなノリの芝居が最高だった。最初にその芝居が出てきて、引っ張りこまれた。
  • 一番印象に残ったのは出演者の村井美樹さん。女優で司会もしているので、ものすごくうまい。あの回しは立派。解説の藤田達生教授と田端泰子教授もしゃべりがうまいし、やくみつるさんも含めてキャスティングはものすごく良かった。
  • 織田信長を社長にたとえて、明智光秀が副社長で、大名が支店長、国替えは大変な人事異動で、光秀は副社長から一気に島根支店長に転勤を命じられたので危機感を持ったという解説が非常にわかりやすかった。
  • 細川ガラシャが幽閉された時に、子どもが1歳と2歳だったという話と、場所が非常に辺鄙なところだったというエピソードは、特に寒い日のロケ映像だったのでよく伝わった。ただ京都縦貫道との絡みでは「縦貫道が通ると、こんなに行きにくかったところにも、行けるようになる」というひと言があれば良かった。
  • スタジオではなく、寒風と雪の舞う中でパネルを立てて出演者が解説していたのがすごいと思った。あの寒い中で、出演者もスタッフも大変だったろうと思った。
  • 全体としてテレビの良さ、現場主義がよく出ていた。実際に寺へ行ったり、明智光秀の首塚へ行ったり、ビジュアルが非常に素晴らしかった。取材は大変だったと思うが、コンテンツが充実した番組だった。

番組の課題

  • 京都縦貫道開通を盛り上げるための番組だそうだが、それにしては道路の扱いが小さかった。導入は歴史から入っても良いが、後段はもっと観光プロモーション的な部分を前に出した方が良かったのでは。
  • 京都縦貫道沿道地域のブランド力向上や活性化にどう資するのかという視点が、番組にもうちょっとあっても良かった。豊臣秀吉の中国大返しの話も、幹線道路があればこその話だが、話がそこには行かず、あまり道の話で広がらなかったのが気になった。
  • 最初は本能寺の変のナゾ解きかと思ったが、細川ガラシャの話の部分にはナゾ解きという面はない。京都縦貫道開通がメインになるから、明智光秀があってガラシャがあってとなるのだろうが、ナゾ解きという意味では話が違う。縦貫道の話を唐突に感じた。
  • 『ナゾ解きガラシャ・明智光秀』というタイトルは、細川ガラシャが主人公になって父親の光秀の謎を解いていく番組かと思ったら全然違った。普通は『ナゾ解き明智光秀とその娘ガラシャ』と名付ける。『ナゾ解きガラシャ』にしたのには何か意図があったのか?
  • 番組の最後に披露される「本能寺の変が何故起きたのか?」という謎の答が「長宗我部元親の手紙」だったが、あれは昨年発見され、かなり話題になったもの。演出的にあそこまで引っ張ることはないのではないか。新たに何か出たかと思ってしまう。
  • 歴史ファンからいうと、斎藤利三(明智光秀の重臣)が出てこないのは何故だろうとか、本能寺の変の原因が“四国説”だと解説していた藤田達生教授は“足利幕府黒幕説”だったのにとかが少しひっかかった。
  • 本能寺の変の原因の“四国説”は、かなり説得力のある説だと思う。実は斎藤利三は長宗我部元親と縁戚。明智光秀は部下の親戚のために、織田信長が長宗我部攻めを命じたその日に本能寺の変をやったわけで、“四国説”はもっと「すごい」ということを強調して欲しかった。
  • 歴史的事実は、新たな発見もさることながら、その事実を見る時代や社会状況の変化によって、見方を大きく変える。だからこそ、藤田達生教授の本能寺の変をめぐる説が学界でどう評価されているのか、少し説明があった方がより説得性を増したのではないか。
  • 再現ドラマがあって、その中にコントがあって、アニメやイラストがあって、各地を飛び回って町の情報などがあって、パネルで説明してと、内容が入ってこなくなるくらい盛り込みすぎではないか。
  • エピソードは多いが、例えば「細川ガラシャはオペラでも取り上げられている」と紹介されるが、どんなオペラかという話は出てこない。かやくご飯のかやくが多いというか、どうせ入れるのだったら具の味がわかるようにして欲しい。
  • 出演者がタレント二人と大学教授一人で、誰がちゃんと番組を進行してくれるのだろうという疑問をひきずったまま見たので、ちょっとしんどかった。
  • 途中から細川ガラシャの解説をする田端泰子教授が出てきたが、突然出てきて突然いなくなったと感じた。「ガラシャについては田端教授が詳しいので」というひと言があったら違ったのではないか。
  • 冒頭のやくみつるさんと村井美樹さんの芝居が、いきなり冗談だらけだったのは、真面目に歴史を見ている者としては違和感があった。
  • やくみつるさんと村上美樹さんの服装が、最初は時代劇のものだったのに、洋服に変わっていった。あれはずっと時代劇の衣装ではいけなかったのか。寒かったのだろうか。
  • 明智光秀と細川ガラシャの父娘関係が本当はどうだったのか、ぼやけてしまった気がする。ガラシャは謀反を起こした父のことを本当に恨みに思っていたのか。その点が、光秀に扮したやくみつるさんと、ガラシャに扮した村井美樹さんの「掛け合い漫才」からは伝わりづらかった。
  • 細川ガラシャも明智光秀もそれぞれ1本ずつ番組が撮れるような人なのに、それを合わせて1本にしているのでもったいなかった。
  • BGMの「アケチー」と歌っている(レキシというバンドの『アケチノキモチ』という曲)のが耳について、その間に説明されていた明智光秀が領地で何をしたかという内容が全く頭に入らなかった。良い感じの曲なのに邪魔をしていると思った。
  • 「レキシ」というバンドは非常に人気があるので、明智光秀の歌なら明智光秀の歌だともっとちゃんと紹介すれば良かった。

番組制作側から

  • 今回の番組は、営業が京都府から「京都縦貫道に絡めた番組が作れないか?」というオファーを受け、報道と相談し、縦貫道が大山崎から京丹波までつながるのだったら、明智光秀とその娘の細川ガラシャだろうということで企画書が生まれたという普通ではあまりないパターンで成立した。
  • 京都府からマストで言われていたのが「京都縦貫道を意識して欲しい」と「京都府内の市町には必ず触れて欲しい」ということなので、かやくご飯の具が多過ぎたかも知れない。
  • コンセプトは「何の変哲もない場所が実は歴史の舞台だった」ということで、そこにわざとらしく大きなパネルを持ち出して情報番組のように解説することによって、歴史的な知識のない人にも見やすい、わかりやすい番組を目指した。
  • 本能寺の変の原因の“四国説”については、ニュース的に言えば、去年見つかったばかりの長宗我部元親の手紙から入るのがセオリーだろうが、この番組は、それほど歴史に詳しくない人に向けて作ろうということで、最後に“四国説”を紹介する構成にした。
  • 武将の名前をどこまで出すかということもスタッフで議論した。パネル上に何人も名前を載せなければいけなくなるし、歴史をわからない人がそこまで理解できるかということで、最後の最後に涙を呑んで斎藤利三の名前を省いた。
  • タイトルの『ナゾ解きガラシャ・明智光秀』は、語呂というか語感を大事にしたいという思いで決めた。サブタイトルをつけるかどうかは議論したが、それ以外に深い意味はない。
  • 当初、京都縦貫道が今年3月中に開通するというスケジュールで動いていたが、7月に延びたため、どのように道路を紹介するかという議論を最後まで行い、あのような「まもなく開通」というスーパーでの紹介の仕方になった。色々な制約の中を走りながら作った感がある。
  • 「レキシ」の曲名は紹介した方が良かったかも知れない。視聴者からの問い合わせも多かった。通常、歴史ものなら、もう少し静かなBGMにするが、普段歴史番組を見ない人にも見て欲しかったため、できるだけ情報番組に見えるように敢えて冒険してみた。
  • 京都府によると、番組放送前に「2月28日放送」という情報を各市町に流したところ、地元の人たちが「見よう」「見た」と言って盛り上がり、地域活性化に一役買ったとのこと。また昨年、大水害があった福知山市では、番組での空撮映像にすごく感動してくれた。そういう言葉を聞くとホッとする。

以上