第559回番組審議会は、10月9日(金)に開かれました。
出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 渡辺 克信 社長、福田 正史 取締役編成本部長、 田仲 拓二 取締役(広報・ラジオ担当)、 山本 晋也 編成局長、藤岡 幸男 報道局長、 川崎 宏 ラジオ 局長、岡田 充 制作部長、 小関 道幸 事務局長、藤沼 純夫 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
番組審議:ラジオ・テレビ番組全般についてフリートーキング
「選挙報道」、「ドキュメンタリー」、「制作番組」、「ラジオ番組」の他「新政権の放送行政」などを中心に
<以下 出席委員の意見 要旨>
- テレビが今や弱者(必ずしも十分な情報をインターネットなどで取ることができない世代)のメディアになっている。テレビは、いろんな方が最低限の政治や世の中の動向についての知識を取り入れている媒体と考えると、民主党のマニフェストにはどう書かれていて、どう実現可能なのかを、一般視聴者の方々にわかりやすく説明するようなテレビ番組は、存外少なかったのではないか。視聴者、有権者にきちんと説明し、情報を提供するような報道番組がもう少し欲しかったなと感じている。
- 子ども番組に興味がある。スペシャル番組の中で「夢を感じる小学校」(9月23日放送)について、アニメをつくろう、無人島へ行こう、流れ星を見ようなど、8人の子どもが出てゆっくりと色んな実験をするが、2時間もありテンポが遅く長く感じた。残念なのは、「素敵な宇宙船地球号」が終了したこと。その「地球号」と同じような内容を「元気ッズ」でしているので、これはずっと続けて欲しいと思った。
- 選挙に限らず、報道のことについて考えた。何か物事を伝えるとき、利点と欠点を同じ割合で伝えて欲しいと思う。公共事業の見直しで八ツ場ダムの報道を見ていると、何年にもわたって苦しめられた方たちの気持ちを伝えるのも大事だが、一方、国の考えも、なぜ中止をしようと思っているかを同じぐらいの割合で伝えて欲しい。利点と欠点を、情緒的な偏った印象を与える報道ではない判断材料を提供して欲しい。
- 民主党はマニフェストを全部並べて「勝ったから」というが、就任したとたんに「これはダメ!」というのが多すぎる。例えば基地の問題や油の問題とか、全部理解して民主党に入れたかというと、そうではない。全部あわせての国民投票ではないか。 報道は、一つ一つの問題について克明に国民に理解できるように伝えて欲しい。放送局に判定はして欲しくない。「こういう問題がある」ということをわかりやすく伝えるのが放送番組で、右左と言って押しつけないで欲しい。
- 視聴率について、サンプル数や時間が視聴率にどう反映しているのか。例えば短い時間のなかで多くのチャンネル変更がある。非常に多様化したなかで、視聴者層がどのように分布しているのか調査の内容を知りたい。また視聴率に過敏になりすぎてはいないか、視聴率が高い番組が良いとは限らない。
- 酒井法子の報道について、確かに国民的アイドルで事件性のある問題だが、異常ではないか。ニュースのなかで占めた割合は、すごい時間になるのではないか。
- 個人情報保護法とか肖像権とか、弱い人たちの立場を守ることはすごくいいことだが、芸能界のようなところに生きていると、伝統や継承が分からなくなる。家庭のこと、父親が何なのか?こんなことで芸は伝えていけない。色んな翳がある人が苦しんで、苦しんで胸を打つ芸になる。芸を伝えることが難しくなってきた。
- 酒井法子の事件で保釈されたとき、カメラのフラッシュをたいたら笑った。どういうことだと大攻撃した。それを言ったらかわいそうだ。あの子らは10代の子どもの頃から「人に会ったらにっこり笑いなさい」、「カメラを向けられたらにっこり笑いなさい」、笑い方も「口角を上げないと印象が悪いよ」って教えられてる。そういうときに誰かが、「それは無理や、だけど心が反省しているかどうか」ということをもっと言えばいい。笑ったからってバッシングしているのを見るとね。
- マスコミ倫理懇談会・全国協議会で、新型インフルエンザ報道をめぐって取り上げられた問題がある。ゲストの高校の先生の報告で、たまたま校舎に古い水道があった。その水道がずっと映像として映され、あたかも「古い水道がある環境だから」というような印象を受けたということをおっしゃった。人の見る目は厳しい。自省も含め、伝える側として大いに考えて欲しい。
- 政権交代という大きな変化があったわけだが、マスコミは少し結果を早く見ようとしすぎているのではないか。もっと長い目で見ないと、せっかくの変化が変化にならない。この度の選挙は、やはり二大政党をめざしての国民の意思ではなかったかと思っている。自民党の今後も必ずやっていただきたい。その二つの比較の中で今後が見えてくると思う。
- 橋下知事のことで、関西のマスコミは振り回されていると思う。関西マスコミの姿勢は、橋下さんが大阪をどのようにしたいのかというビジョンが全然見えないままに、彼の言うことを追っているように見える。もっと厳しく、彼は大阪をどうしたいのか。まずそれを引き出すような何か仕掛けをしていただきたい。
- ラジオが大変と聞いていて、今ラジオしか出来ない事は何かということを改めて考える時期に来ていると思う。言葉に対して非常にラジオは有効だ。音楽と言葉で何か出来ることがあるんじゃないかと思う。
- 裁判員制度の報道について、最初の例や2例目は、割と大々的に報道されているように思うが、以後どうなっていっているのか。「控訴された場合に、高裁に行ったら一審の裁判員の判断が覆ることがおおいに考えられる」ということがあった。結構我々は忘れやすい。きちんとした情報を的確な形でフォローしていただきたいと思う。
- 色んなテレビメディアへの批判では、繰り返し、繰り返し流されることによって、視聴者にすりこまれてしまうものがある。選挙報道でもある部分批判されて、自重したりということになってくる。むしろ映像とタイアップしているからこそ、もっと深く見せられるもの、考えさせるものがあるのではないか。そこのところを考えていただきたいと、色んなものを見ていて思った。
- 放送法の解釈について、今やデジタル化されて技術は格段の進歩を遂げている。電波の希少性というのは、特に放送法で公共性を特段に謳うほどの必要はなくなってきているのではないか。少なくとも民放に関する規定については廃止してもいいんじゃないかと考える。今度民主党政権にかわり、大きく放送行政のスタンスが変わろうとしている。放送法廃止に向けて民放は総力をあげて政治的な動きをすべきだと思う。ここで声をあげるべきだ。この機会を逃してはいけないと思う。
テレビ朝日系列番組審議会委員代表者会議について
テレビ朝日系列24社の審議会委員代表者が、10月22日(木)松山市で一堂に会し議論した。
<各社が事前に自社の審議会で放送番組全般についてフリートーキングし、まとめたものを系列会議の場で報告。意見集約は以下の通り>
- 24局からの審議内容の報告を総括する形でABCの井野瀬副委員長がコメントした。今後のテレビメディアのあり方として、「テレビは今、高齢者など弱者(情報をインターネットなどで得られない世代)のメディアになっている。こうした人たちに民主党のマニフェストには何が書かれ、結局何が言いたいのか?そういった問題について番組制作者は自分たちが考える以上に見やすく、きちんとテーマを整理して、より具体的にその中身を説明する必要があった。弱者のメディアになっているという点は今後どの様にテレビメディアが展開していくか1つのポイントかも知れない。」
更に視聴率の必要性と妥当性について、視聴率の「21世紀的解釈」「21世紀的正体」をきちんとおさえる必要があると強調した。 - テレビ朝日の早河社長は新政権の日本版FCC(通信放送委員会構想)について次のように述べた。
「原口総務大臣、内藤副大臣に直接会って確認したが、現段階では2011年の国会に法案を出す方針で1年かけて放送事業者などの意見を聞いていくとのこと。
BPOの役割をどうするかについては正、副大臣の見解がわかれている。新しい委員会は『放送の自由』を守る為に作るということなので反対はしないが、BPOの精神は生かして欲しいというのが民放界の最大公約数の意見だ」と説明した。 - これを受けてABCの豊蔵委員長は「日本版FCCはいらないという議論もあってよいのではないか」と問題提起。「内藤副大臣は目に余る人権侵害が起きた場合、何かできる権限を持たせると明記してるが、権限を担う委員の人選が非常に難しくなる」「新聞を規制する法律がないように放送局の表現の自由を守る為に言論機関に介入するような行政委員会はなくした方がよい」との見解を述べた。
- 最後にテレビ朝日の堀田委員長が「政権交代に伴う報道の変化」についてふれ、民主主義の進展にとって画期的な段階に入ったので報道は知恵を絞って政策の優先順位の判断を促す情報を提供すべきだとコメント。更に「裁判員裁判の報道」について「市民参加することが司法権の行使をより市民の為のものにしていく、そのことを国民に分かる報道をすべきだ」と締めくくった。
以上