第601回番組審議会は1月10日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 脇阪 聰史 社長、和田 省一 副社長、 松田 安啓 取締役、梅田 正行 取締役、 岩田 潤 編成局長、太田 充彦 広報局長、 森本 茂樹 スポーツ局長、三好 康嗣 スポーツ部長、 東野 裕 プロデューサー、 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
テレメンタリー「文武両道がボクの道~京大野球部・田中英祐~」
<事前視聴 2013年11月3日(日)午前5時20分~5時50分放送>
及びスポーツ放送全般について
番組の良かった点
- テレメンタリーは重たいテーマが多いが、今回は、非常にさわやかで明るく、軽やかな感じで見ることができた。授業の実験やアルバイトなど取材も幅広く、見ていてわかりやすい番組だった。
- M3(50歳以上の男性)、F3(50歳以上の女性)をはるかに超えている世代としては、「近頃の若い者は」ということを思っているものだが、こんなに若くて頑張っている主人公を見せてくれると、「若者も捨てたものではないな」という気持ちになって、ありがたかった。
- 主人公は、いずれ野球か研究か、選択を迫られる。何故こっちを選んでこっちを捨てるのかという悩みが必ず出てくる。それを是非続編で見たいと思った。
番組の課題
- 主人公の成長は素晴らしいと思うが、その成長から何を伝えたかったのか。立派な成長を見ていくのは良いのだが、共感を持てるところが何となく少ないような気がした。羨ましさだけが残るという感じがした。
- 主人公は防御率が1.06で、0勝4敗。いかにチームが打っていないか。主人公は「お前ら、もっと打てよ」と仲間に怒っても良いくらいだが、そういう描写はない。つまり人間臭さが伝わってこない。主人公を良い子とは思うが、良い子としか思わない。
- 主人公の「文武両道」を謳っているが、京都大学工学部の運動部員には当たり前で、たまたま才能ある投手だから光を当てているが、他の運動部員とどこが違うのかと思った。主人公の挫折や、苦労が見えないのが弱い。
- こういう主人公が「いる」ということは丁寧に描かれているが、紹介しているだけで何もいっていない。もっとポイントはないのかといいたい。例えば、ワースト連敗記録を何とかしようと頑張る京都大学野球部があって、その中の一選手としての主人公を追いかけるとか。つまり今回の番組は、どの方向で見たら良いのかがわからない。
- 主人公がどのようにすごいのか、その背景にある京都大学野球部は何故弱いのかということが、見ていて全然わからなかった。「主人公がすごい」というのを前提にして話をしているような気がした。
- 野球選手を取り上げながら、チームとしての描き方が少ない。例えばグラウンド、設備、指導者、チーム運営の仕組みなど。同じ京都大学のアメリカンフットボール部は非常に強い時代があって、チームを強化する知恵と工夫があった。そういうところを描いた方が、より深みが出たのではないか。
- 今回のテーマは、「キャスト」などの報道情報番組内のコーナーで継続して追いかけるのは良いが、「テレメンタリー」ではどうなのか。良いドキュメンタリーには、作家性が非常に際立った強い主義主張が必要だと思うが、今回の番組は、才能ある若者を追いかけているという以上の深掘りがなかったのが残念。
- テレメンタリーには問題提起をしてくれるドキュメンタリーという期待感がある。この番組は違うのではないか。土曜日の午前9時半からの「LIFE~夢のカタチ~」という番組で扱うのがピッタリではなかったか。
- ナレーションの西田ひかるさんは、ものすごく好きなタレントだが、彼女を使う必要があったのか、意味がもう一つわからなかった。彼女が母親だからキャスティングしたのか。アナウンサーで良かったのではないか。
スポーツ放送全般について
- 今のスポーツ中継はあまりにもアナウンサーと解説者に頼りすぎ。もう少し映像に工夫できないか。例えば、テレビ画面で各視聴者が好きなアングルを見られるようにするとか。
- 関西の将来性あるスポーツ選手を、継続して追いかけることは非常に大事。もっと関西出身のアスリートを大阪の放送局でフォローしてもらいたい。例えばACミランの本田圭佑選手やボストン・レッドソックスの上原浩治選手ら、世界で活躍している関西人はいっぱいいるのに、BSでしか見られない。
- スタジアムには、ワーッと盛り上がる雰囲気がある。スローモーションやクローズアップが見えなくても興奮してしまう。テレビではその盛り上がりのところがどうしても弱い。次世代テレビなどで、皆が参加して盛り上がる仕組みなどを工夫して欲しい。
番組制作側から
- 2012年9月に、京都大学にすごいピッチャーがいると聞き取材を始めた。当時、同業他社は取り上げおらず、朝日放送が独自に発掘したネタ。同年10月にニュース情報番組「キャスト」のコーナーで紹介。その後も「キャスト」で何度か放送を重ね、今回「テレメンタリー」という形で番組になった。
- 主人公は自分の葛藤や苦しみをあまり表に出さないタイプ。心の中ではモヤモヤしているし、「皆、打てよ」と思っていたとしても、それを表に出さない。だから、そういうものを映像化するのは非常に難しかった。
- 球速148キロはなかなか投げられるものではない。しかも東京大学卒のプロ野球選手は数人いても、京都大学卒はゼロ。80年間一人も京大からはプロへ行っていない。つまり数十年に一人の稀な選手を朝日放送が単独で取材した意義は大きい。ただ今回の番組としては、演出能力が足りなかったと思う。
- 主人公は今年4年生になる。プロ野球に入るかどうかも注目されているが、今後とも彼の内面の葛藤なども含めて、引き続き取材を継続していきたいと思っている。
- スポーツ中継映像について、例えば野球では、日本シリーズなどで審判の頭にカメラをつけたり、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)台湾大会ではリモコンのヘリコプターに中継カメラを積んで飛ばしたりして、多角的な映像を入れようと放送界全体で努力しているところ。
- スポーツ中継は生放送が中心。しかし民間放送で放送枠が決まっている場合、終了まで放送するのが難しくなっている。そこで朝日放送としては、BS、CSを含めた3波総合編成の中で、スポーツ中継をトータルで伝えていくということをやっていきたい。
以上