第598回番組審議会は9月13日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 脇阪 聰史 社長、和田 省一 副社長、 松田 安啓 取締役、梅田 正行 取締役、 千原 邦義 取締役、 岩田 潤 編成局長、山本 泰弘 広報局長、 中井 正二 技術局長補佐、 橋本 祐子 ラジオ局長補佐、 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
次世代テレビ時代、地上波テレビの生き残り策について
「そもそも」論として
- 今回のテーマの「地上波テレビの生き残り策について」は健全な危機感から出たものだと思うが、それがそのままこの問いになるというのは、いい方は悪いが、「テレビ局さん、大丈夫かいな」と思う。むしろ「地上波テレビは生き残らないといけないのですか?」ではないか。若い世代にとって、テレビで見るものは、BSもCSもユーチューブも皆同じで、特に地上波を意識しているわけではないだろう。
- 「地上波テレビの生き残り策」というテーマだが、「これからの地上波テレビをどう発展させるか」などをテーマにすべきだ。テレビは昔、ものすごく偉かった。それが「テレビの時代は終わった」といわれ、今テレビ局は視聴者に媚びているのではないか。「テレビはもっと偉そうにしろよ」「もっと自信を持ってモノを作れ」というのが一番いいたいこと。
- 「次世代のテレビが出てくる中で、地上波の生き残り策はどうなのか?」という問いについては、次世代のテレビが出ていない今でも一緒ではないのか。今でも媒体間での厳しい競争にさらされている中で、何が必要かといえば、「見たくなるコンテンツ」だと思う。大阪弁でいう「おもろい」、これには「ためになる」など色々な意味があると思うが、これをどう作るかだ。
- スーパーハイビジョン(4K・8K)については、パブリックビューイングのような大画面でこそ価値あるものであり、当面は衛星波でしか放送できないということになると、今回のテーマ「地上波テレビの生き残り策」にあわないのではないか。
状況論として
- 「生き残らなければならない」とか「このままではテレビは」という話は、この十数年いわれ続けてきた。要は「狼が来るぞ」といわれながら、それほど大きな「狼」は来ていないと思う。その中で判断ミスだと思うのは、家電業界もテレビ業界も大型の画面と薄型を選択したにもかかわらず、ユーザーは、画面はなるべく小さく、個人視聴で、家庭団欒ではないという選択をしていること。
- 総務大臣の諮問機関「通信放送のあり方に関する懇談会」が2006年に出した報告書は、以下の3点が重要としている。1点目は一般利用者の観点で考えろということ。2点目は競争力の強化と事業展開の多様性、これは海外への展開も含めて競争力を放送事業者は強化しろということ。3点目はソフトパワー(コンテンツ力)を強化しろということ。これらは2011年めどの提言だが、2020年に向けても本質的に変わらないと思う。
- スマートテレビについて、テレビ業界は「まずテレビから起動して」携帯端末や家電製品との連携を目指しているようだが、朝起きてまずテレビをつける人がどんどん減っているのが現状。まず「テレビを起動する」という行為をどのようにしてやってもらうか。朝8時になったら「あまちゃん」を見るためにテレビをつけるというように、テレビから入るということの意味合いは色々あると思う。
- テレビ受像機に紐付けされた携帯端末はガラパゴス化しないかという懸念がある。将来のテレビはもっと薄くなって壁と合体してインテリアにもなるだろうし、要は家電業界ばかり意識しないで、住宅産業との連携なども視野に入れるべきでは。
- 「スマート○○」というのは、ここ数年の流行。スマートハウス、スマートグリッド、スマートコミュニティ、スマートフォン、わかったようで結局あまりわかっていない。例えばスマートハウスは、いくら高機能化しても住んでいる人が快適でないと全然評価されない。テレビも全く同じことだと思う。
- 今のテレビが、新聞よりも絶対に優位にあるのは何かというと、「とりあえずつける」というところがまだあること。これを頑張れるところまで頑張った方が良い。メディアにとって生き延びるためには、「習うより慣れろ」というところにどうやって持っていくか。
- 65歳以上が日本の人口の四分の一以上になり、その中にはインターネット弱者がかなりいる。テクノロジーや機器は発達している一方、人間が使いこなせていないという現状を作り手側がどのように考えるか。
コンテンツ論として
- コンテンツの向上は絶対に必要。どの番組も同じ内容、同じタレントばかりで、またワイドショーとニュース番組の区別がない。何でもバラエティ化している今の番組を見ていても、それはすごく思う。
- 情報番組などでは、未だに週刊誌などから流行を拾い出して追いかけたり、他局の真似を平気でしたりしている。「もっと自分たちで考えて作りましょうよ」といいたい。受像機が発展しているのに、あまりにも作り手側が発展していない。若者がテレビを見なくなったといわれるが、「それなら見せたろやないか」くらいの気概を持って欲しい。
- 今の若者も、やがて高齢になり、テレビが一番の娯楽になるのではないかと思う。だから、今の高齢者をターゲットにするというより、常に高齢者が見やすい番組を作る。別に古いものを扱うというのではなく、見やすいものを作るというのがあるのでは。
- 最近、スーパーのチラシの検索サイトが大人気だ。スマートテレビになれば、家庭のテレビで一番近くのスーパーの情報が見られるようになるかも知れない。このように、非常にエリアを限定したコンテンツが出せるのがスマートテレビの一つの本質ではないか。
- インターネットは自分から進んでパソコンを開けて検索して、行動を起こさないといけないが、テレビはつけたら情報が勝手に入ってくる。地上波テレビは「ながら視聴」ができる番組を増やすべきだ。そのために、むしろ情報の密度は増やしてもらう。テンポの良いものを作る。
- テレビの最大の魅力は生の情報だと思う。その中でもスポーツほどリアルに勝るものはない。新技術をスポーツの臨場感を伝えるものにしてもらいたい。例えば、複数の映像を同時に表示して、見たいアングルを選べるとか、選手の情報が見られるとか。生情報として、災害時の対応にも常に力を入れておいて欲しい。
- 甲子園の高校野球も、放送があればこそ全国区になった。このように地域限定のコンテンツを大事にして、朝日放送はそれらを全国あるいは世界に売るようなことを真剣に考えていくべきだ。
- テレビ地上波の将来性については、フォーマット権をどうするかにかかっていると思う。良いものを作って番組販売する。朝日放送でも既に取り組んでいるが、まず「朝日放送のコンテンツはすごいよ」というのを広げていくことが必要では。
- 若者が今テレビで何を見ているかといえば、話題になっているのはドラマ。でも、そのドラマも録画とかインターネットなどで見る時代。録画されてCMをスキップされて見られる。この辺りは、従来のビジネスモデルを考えているだけでは衰退していくと思う。テレビとインターネットを合わせてCM料をもらうとか、課金してコンテンツをネット配信するとか、方法を考えるべき。
- オールドメディアは最後には芸術になるしかないといわれる。絵画も、写真も、そうして生き残った。テレビも、非常にクリエイティビティの高い、お金をかけなくても、素人ではできないハイクォリティのものを作っているというのが一つの抜け方になるのではないか。
「原点」を見つめよ
- 1953年からずっとテレビとともに育ってきた世代にとって、テレビはこれから先もそんなに変わらないだろう。若者にとっては、スマホありタブレットありの中で「テレビもあるね」ということで、テレビに求めるものはどんどん多様化している。視聴者の視点が大事といっても、どこをターゲットにしてやっていくのか、ここが非常に難しいと思う。
- 携帯電話で撮影した事件事故の映像がテレビで放映されることが増えた。早さでは、テレビは携帯電話に負けている、情報量はネットに負けている、迫力は映画に負けている。何で勝つのかといったら、一つは総合力、もう一つは信頼性だと思う。
- 情報化社会はこれからもどんどん進んでいく。インターネットや携帯端末はどんどん進化し便利になるだろう。しかし便利さとは違う、テレビが差別化できる利点は必ずある。それをまず見定める必要がある。例えばテレビは、一定時間、集中力を持って見ることができる「腰が座っている」メディアを目指すべきでは。
- 調査し、取材する力をテレビが持っているということを示して欲しい。今はインターネットなどを通じて情報が多様化、多量化し氾濫しているが、国民はいざとなれば信頼できる情報を求めている。そこにテレビは戻っていかなければいけない。「地上波テレビの生き残り策」とは、もう一度原点に立ち返って、言論機関としての立ち位置をしっかり見つめ直すことではないか。
以上