第588回番組審議会は9月14日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 渡辺 克信 会長、脇阪 聰史 社長、 和田 省一 専務取締役、田仲 拓二 常務取締役、 大塚 義文 取締役、松田 安啓 編成局長、 山本 泰弘 広報局長、 今村 俊昭 制作局長、岩城 正良 テレビ制作部長 奈良井 正己 プロデューサー、 橋本 祐子 ラジオ編成業務担当部長 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
『東西芸人 いきなり! 2人旅』
<事前視聴 6月24日(日)午後11時30分~12時25分放送>
番組の良かった点
- 旅の番組が増えているが、この番組は切り口が面白くて、旅を通して東西の芸人同士の心構えというか、志、目指すところの違いをお互いに知り合うところが魅力になっている。料理などの紹介もとてもあっさりしていて、旅の番組ではあるが、トークが一番のご馳走になっている。
- 最近の、お笑い芸人がコメンテーターとして出てきて、社会的な話とか政治的な話をする番組に比べると、自分のこと、芸のことの話で、話している方と話している内容が非常に釣り合って面白い。
- 普段は縁がない東西の芸人さん同志を現場で引き合わせ、アドリブを重ねるような旅を強要する。芸人さんたちの素の人柄、その人間性までをテレビで見せようという「芸人観察」のバラエティ。従来なかった試みであり、強いオリジナリティが感じられる。
- 今回は70歳の坂田利夫さんと25歳のハライチの澤部佑さんという年の差で、自分の経験など思っていることを出しあったりするところも、非常にほのぼのとして、おじいちゃんと子どもか、お父さんと子どもかといっていたが、そういう雰囲気が非常に良かった。
- とにかく自然に笑みが出る番組だった。何よりも、お笑い芸人の人柄というか、素顔が見られる。普段聞けないような話も聴けた。この番組は、芸人さんにとってもすごくプラスになる番組だなと思った。
- 芸人を酷使する無茶な番組が多い中、非常におとなしく、安心して見られる番組。安心して見られるソフトウェアを持つのは非常に大切なことだと思う。
- 知らない者同士だからこそ話してくれることもある。それが狙いだとしたら、ものすごく良いと思う。今回も坂田利夫さんが「アホを芸にしようと思った」と話していた。坂田さんと何度も仕事をしたが、初めて聞いた。そこまで聞き出しているのは素晴らしい。
- 坂田利夫さんの人間がにじみ出ている。坂田さんのアホ役も大変だという話、おもちゃ扱いをされるとか、あの時の表情は真面目で、真剣で、少年の顔つきだった。澤部佑さんのキャラクターも少年。年の差を超え少年同士の組み合わせになっている。私はチャップリンの映画「ライムライト」を思い出した。二人の会話に笑いの奥にある哀愁を感じたから。
- スタジオMCの勝俣州和さんと東野幸治さんのあのテンションがないと、VTRだけではもたないと思うので、あの二人の回しは非常に優秀だなと思った。テープを止めて突っ込んだり巻き戻したりするような演出も非常に新しくて面白い。
番組の課題
- 二人で買物をするとか、ホテルに入った時の会話とか、非常に作りもの感を感じた。また、スタジオMCのうち、勝俣州和さんの受け方というか、笑い方がちょっと激し過ぎて、わざと受けているのではないかという過剰感があった。
- 入浴シーンが嫌だった。長過ぎた。坂田利夫さんが最後にせっかく良いことを話しているのに、全体として良い印象がなくなってしまった。番組の意図よりも、坂田さんの表面的なところ、入浴シーンのあの見た目にガーッと引っ張られたのではないか。
- 入浴シーンが毎回ある。出会いのシーンも毎回同じ様。二人でどこかに行って、風呂に入ってワイワイやって、最後はしんみりしてと、あまりにもパターン化されていて、何回か見たら「もう、いいかな」という気がする。今後、どのようなバリエーションが展開できるかが課題だと思う。
- 坂田利夫さんが死んでいるかも知れないというシーンで、不覚にも一番笑ってしまったが、1年ほど前に祖母を見送った身からすると、ちょっと自己嫌悪に陥ってしまった。それぐらいの毒は仕方がないのかとも思った。
- 新しさも感じるが既視感もある。やはりもっとワクワクしたい、もっと驚きたい。多少毒があってもかまわない。例えば芸人論でいえば、喧嘩を見せても良いと思う。いつも仲良くホンワカ終わって良いのだろうか?
- この番組のポイントは、「何も知らされていない二人」が「旅」するところにあるが、視聴者にも知らされない。何故この二人なのか、何故そこに旅するのか、番組では一切いっていない。そこがものすごく不自然というか不親切というか、気持ち悪さが残る。
- 一番気になったのは、ラストシーン。雨が降っているホテルの前で携帯電話番号を交換しないだろうと思った。例えば朝食時などに交換しているはず。「ここで別れのシーンを撮りますから」という感じがプンプンした。24時間カメラを回しっ放しにしたものではなく、例えば朝食のシーンはカットして、「ここから回しますよ」と撮影したものだとすれば、リアリティにかなり影響すると思う。
番組制作側から
- ひと口に芸人さんといっても、その思いは東西でずいぶん違う、年代によってもずいぶん違う。両者の間にある種の化学反応を起こせないかということで始めた企画。今回は坂田利夫さんとハライチの澤部佑さんという、一番年の差がある二人という意味で非常に象徴的な回だった。
- 天涯孤独の坂田利夫さんが、昨日初めて会った人に、「お前の父親になった気持ちや」といったのがこの回の特色。
- スペシャルで始めた時は、「東西リアクション芸人対決」とか「東西ファッションリーダー対決」と題して、組合せの理由を明らかにしていた。しかし、キャスティングが先細りしたので、敢えていわなくなった。隠されたテーマはある。今回でいうと「少年同士」。坂田さんも澤部さんも本質は少年だと。VTRを全部見終わった時に、「年は離れているが、二人とも中学生みたいやな」という読後感にしたかった。
- 基本的に寝ている時と朝起きるところは固定カメラで撮影している。朝食は別々に食べてもらうようにして撮影せず、その後、別れのシーンを撮影する形になっている。朝食も撮るとなると、スタッフの労力が大変。朝は大広間で食事するところが多いため一般の方をどうするのかとか、2日目のスケジュールに余裕がないとかの事情がある。しかし、あまりに不自然さを感じるということであれば、対応策を考える。