第618回番組審議会は9月11日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、酒井 孝志 副委員長、
道浦 母都子 委員、星野 美津穂 委員、
淺井 栄一 委員、高見 孔二 委員、
小松 陽一郎 委員、池内 清 委員、
水野 由多加 委員

 

〔当社側〕
脇阪 聰史 社長、
松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、
岩田 潤 編成局長、岡田 充 コンプライアンス局長、
橋本 祐子 ラジオ局長補佐、
戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

1.地域のためにテレビができること

2.朝日放送のために、番審だからできること、番審がしなければいけないこと

地域のためにできる最大のもの――災害報道

  • 地域に対してテレビができることの最大のものは災害時の情報で、正確さと迅速さが大事。その際にインターネットとの共生をしていくということ。dボタンをもっと活用し、通常のテレビ番組からインターネットに誘導して情報を見られるようにしたら良いのではないか。
  • マルチチャンネルは、もっと使いようがないのだろうか。例えば鹿児島で何かあったら、マルチチャンネルに移れば、関心のある人が見られるようにならないか。鹿児島で地震があっても、大阪の大半の人にはあまり関係ないかも知れない。でも、鹿児島に親戚やら友人がいる人たちはその情報を知りたいと思う。そういうやさしさが欲しい。
  • 報道ニュース、特に災害になると、今は視聴者から第一報がスマートフォンの映像で入ってくる。それをいかに集めて、どのようにプラスアルファを出していくのかというのがこれからの勝負だと思う。そこに新しいものが出てくると面白い。
  • 茨城県の鬼怒川決壊の報道番組を見ていて、テレビ局が報道することプラス何かできることはないのかと感じた。例えば、多くのヘリコプターを出しているし、リポーターも出ているわけだから、「迎えに来て欲しい」とか「助けに来て欲しい」という人たちと報道機関が連絡を取るような方法はないのか、そういうことはしていないのかと考えた。
  • 地域で解決しなければいけない問題というものがある。例えば寝屋川で子どもが殺される事件があったが、地域がもっと問題を掘り下げて、原因を洗い出して、解決するためにどうしたら良いのかという情報を提供する番組が必要。

テレビ局はもっと地域に出ていこう!

  • テレビ番組で地域が元気になるには、テレビ局がもっと地域に出ていく。典型は『NHKのど自慢』、『開運! なんでも鑑定団』、朝日放送なら『朝だ! 生です旅サラダ』や『ジモイチドライブ』など。地元の人が参加しているので、「皆、見ようや」と盛り上がる。
  • 「ためになった」「感動した」「楽しかった」「心が豊かになった」などと思える番組を発信することで、地域に住んでいる人たちが元気になるということが循環していく。例えば『東京タイマー2020』という番組。まだ知られていない選手で、東京五輪を目指している人を早くから掘り起こし、紹介する番組。
  • 地域は文化や自然、歴史などの資源を持っているが、住人は意外と知らない。地域の活性化になるような情報、身の回りの情報、イベント情報などを知りたい。
  • 鉄道で「信頼される」といったら、安全、安心、快適というのが肝。「信頼されるテレビ」も一緒で、安全と安心、それに公平、正確、速さなどのキーワード、コンテンツで言ったらクオリティというワードも絡むと思う。
  • 視聴率だけ追うと、同じような番組ばかりになる。そうではなく、共感を得るような番組をたくさん作ることで、結果として視聴率もついてくるのではないか、信頼される局になるのではないかと考える。

新しい時代の新しい取り組み

  • 北海道テレビが台湾のケーブルテレビ局と組んで、10年以上前から『北海道アワー』という番組を毎週放映してきた。すると台湾から北海道への観光客が5倍に増えた。このように、政府のクールジャパン戦略、ビジットジャパン戦略に沿った形で、コンテンツ産業と非コンテンツ産業がうまくコラボすれば、外国からどんどん人が来てくれる。地域が元気になり、雇用創出にもつながっていく。
  • 地域への貢献を目的とした事業に対するクラウド・ファンディング(インターネットを通じた資金集め)と放送との連動を、今後いっそう盛んにすることで、社会の信頼を高めることができる。朝日放送の事業でいえば、「関西発の新たなモノづくり」を目的として実施された「ABC Hackathon」などは先駆的な試みとして評価できる。

“地域”とは、いったいどこなのか?

  • 何でこんなテーマが出てくるのか。以前は、テレビ局が地域のためになっている、信頼されているというのは当たり前だったのだろうが、こういう問いが出てくるということは、どうもそうではない、テレビ局が自信を喪失しているということかなと思う。
  • 東京一極集中の中で「地域のために」の“地域”とは、いったいどこなのか? それこそ、リニアがつながれば大阪から東京まで1時間で行ってしまう。全てが東京で、地域なんかなくなる。テレビの中でも、それぞれのローカル局の立ち位置が非常にわかりにくくなっているのではないか。
  • 情報環境において、東京で住む楽しさと大阪で住む楽しさが違うということがある。大都市の中で人口減少率が大きいのは北九州市と大阪市という発表もあったが、「大阪に住みたいな」、「大阪に住んだら楽しそうだな」という状況ではないというのは認めざるをえない。このことに在阪の放送局はどのような役割や責任があるのかと思う。
  • 色々な理由で東京があまりにも大きくなりすぎて、経済的に言うと大阪は対抗軸ではありえない。そこをはっきり認めるところから始めて、地域と共に考え、喜怒哀楽も含めて映しだしていけば、地域を元気にできると思う。その際、売り物は、人材の厚み、それから文化。特に人材で言うと、学者。大学がこれだけあるのだから、もっと硬派系の学者が硬派系の語り口でテレビに出るようなことはできないのだろうか。
  • 多くのローカル局がキー局の番組を流す。それでは「地域のために」とか、「信頼される局」にはなりにくいわけで、自主制作の枠を広げることが必要。朝日放送は自社制作率が高いのが良い。また、コンテンツ的にも、報道・情報だけでなく、バラエティに非常に力を持っていることと、スポーツでは阪神タイガースや夏の高校野球など充実している。

やさしくなければテレビではない

  • 信頼されるためには“やさしさ”が必要。お年寄りと、病人と、地方に住んでいる人と、お金のない人が、基本的にテレビを見ている。この人たちを忘れたら、テレビという業態はだめではないか。視聴率だけになってしまうと方向が変わってしまう。番組審議会の役割としては、変な方向に行くのを「そっちではなく、こっちに行った方が良い」ということだと思う。
  • 次世代育成支援対策法に関わる行動計画の枠組みの中で、地域社会への貢献を具体化することも地域からの信頼を高める手段。朝日放送の事業では、社員が小学校を訪問、放送に関する情報学習を行う「ABChan(えびちゃん)教室」の活動などの事例がある。
  • 番組審議会ができることについては、各番組が「朝日放送信条」や「朝日放送コンプライアンス憲章」を遵守しているかどうかを常にチェックすることで、放送局の企業価値の向上をはかり、ひいてはコーポレート・ガバナンスに資することができる。ちなみにテレビ東京ホールディングスは、コーポレート・ガバナンスの「基本的な考え方」に「放送番組審議会からの意見を積極的に取り入れて、良質な番組を制作・放送するように日々努める」と明文化している。

以上