第617回番組審議会は7月10日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
井野瀬 久美惠 委員長、酒井 孝志 副委員長、
道浦 母都子 委員、星野 美津穂 委員、
橋爪 紳也 委員、淺井 栄一 委員、
高見 孔二 委員、小松 陽一郎 委員、
池内 清 委員、水野 由多加 委員

 

 

〔当社側〕
脇阪 聰史 社長、
松田 安啓 常務取締役、緒方 謙 取締役、
岩田 潤 編成局長、岡田 充 コンプライアンス局長、
星 信幸 ニュース情報センター長、
吉原 宏史 ディレクター、
戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、
北本 恭代 事務局員

審議課題

『テレメンタリー2015 シリーズ戦後70年(5)満州に進撃せよ! ~草原に眠るソ連軍巨大基地~』
<事前聴取 6月14日(日)午前5時20分~50分放送>

番組の良かった点

  • 朝日新聞と共同で取材したテーマ。新聞紙面でも記事を展開したが、番組を見た方がよくわかった。映像の力によって、紙面ではいくら説明しても伝わりにくかった旧ソビエト連邦軍の基地の巨大さが非常によくわかった。
  • 作家の半藤一利さんにインタビューしていたが、半藤さんが今回の基地に驚いたというのが驚き。ノモンハン事件やソ連軍の満州侵攻に非常に詳しい半藤さんが今回の基地のことは知らなかったという。それだけ超大発見だろう。
  • すごい反戦番組だと感じた。モンゴルの何にもないところに線路を敷いて基地を作って満州侵攻のために出撃して、その後70年間ただ朽ち果てるだけ。こんな無意味なことが戦争にはあるのだということを考えさせられた。
  • 『テレメンタリー』のファンで、「戦後70年シリーズ」も見ているが、今回の作品が一番印象に残った。“手榴弾”の残骸が見つかった場面を見た時、一瞬にしてそこへタイムスリップした。長々と説明があるよりも、ああいう映像が一番凄いと思った。
  • エンディングでの、「日本はロシアといまだに平和条約を結べていない」というナレーションが効いている。意外と気にかけられていないところではないかと思った。
  • 戦争経験者が少なくなり、ますます伝承することが難しくなっているが、今は安全保障法案などで戦争を考える良いきっかけの時。今回の番組についても、ただ放送しただけではなく、戦争を考える社会的な動きにつながっていけば良いと思う。

番組の課題

  • この素材をよく25分間にまとめたと思う。しかし、全てがサマリーになっていたのが残念。これはどう考えても2時間番組か、前後編にするかだと思った。それくらいの中身があった。是非、機会があれば、そういう続編を作っていただきたい。
  • 基地への鉄道はどんな車両だったのか、何を運んだのか、具体的に当時の写真などがどうしても見たくなる。基地が大きいというのはわかったが、「それで終わりなの?」と感じた。ロシア側に取材した続編が是非見たい。
  • ノモンハン事件の話をきっちり見せて欲しかった。その後に今回の話があれば、番組として深くなったのではないか。要は、終戦時のソ連軍の侵攻の話だけに見えてしまい、大陸での戦いをなかなか大づかみにできないのではないかと思った。
  • ソ連軍が満州に侵攻したのが8月9日、長崎に原爆が投下された日と同じだった。この辺を強調したら、もっと歴史的に意味のある番組になったのではないか。
  • ソ連軍の巨大基地を発見した岡崎久弥さん(岡山市の歴史研究家)が、何故あの基地にあれだけ執着しているのかがちょっと気になった。岡崎さんの父親が関東軍の元兵士だったからと説明されてはいたが、そこが何となく淡々と終わっていたので。
  • 基地への線路跡と思われる盛り土が映っていたが、あれだけの距離をわずか数年間で盛り土までしてレールを敷くのは、ものすごい資源の投入だと思う。ソ連が、ドイツと戦いながら、それをしたのは、持っている力も凄いし、その原動力は何だったのだろうと思った。続編で、色々な真実を追求して欲しい。
  • 岡崎久弥さんが、ノモンハン事件(ハルハ河戦争)に従軍した元日本兵のためにハルハ河の水をペットボトルに汲んで持ち返る場面があるが、そこだけ妙に情緒的。それまでの話とつながらない気がした。
  • 25分間では言いたいことを十分言えないのであれば、データ放送で補足できないかと思った。Dボタンを押すと、詳しい解説や取材の苦労話などが文字で表示されるとか。
  • 午前5時20分に目覚めてすぐオンタイムで見た。そうすると、次々に重要なことが出てくるのに、なかなかついていけない。素材が非常に良いだけに、視聴者の立場での番組の作り方、伝え方、あるいはマーケティングというのがどこかに飛んでいたのではないか。
  • 30分間の番組の中で、1回のCMチャンスに同一素材が2回入っていた。次のCMチャンスにも同じ素材、次のCMチャンスにもまた同じ素材が入っていた。確かに、同一素材の繰り返し回数の上限とか、同じCMチャンスで2回入れないとかのルールはないが、CM挿入の新しいやり方や、視聴者満足を損ねない広告のあり方について是非研究していただきたい。そうすれば、広告主に対しての朝日放送の新しい差別化、「うちは配慮していますよ、よそは配慮していませんよ」ということになると思う。

番組制作側から

  • 旧知の岡崎久弥さんがグーグルアースを使って、モンゴルにある巨大なソ連軍の基地跡を発見したとの連絡を受け、共通の知人の朝日新聞編集委員とともに現地を取材し映像化した番組。
  • 制作者としての狙いは、まず、映像を見てもらいたいということ。その上で、安全保障や国際政治の複雑さ、厳しさ、冷徹さを考えるきっかけになればと考えた。
  • 現地取材はオフロードで、腰と首にかなり疲れがきたし、ずっと強風だったので、目を開けていられないくらい砂が舞った。日本の数倍大きいダニがテントに入ってくることもあった。最終日には強風でテントのポールが折れ、崩れたテントの中で我慢しながら寝たという取材だった。
  • 空撮の映像は朝日新聞の社機から撮ったものだが、ものすごく大変だった。モンゴル当局の許可が一筋縄でいかず、パイロットの英断もあり、ようやく撮影できた。今回は朝日新聞の協力がとても大きかった。
  • 『テレメンタリー』はテレビ朝日系列24局で放送しているが、局によって放送時間が全く違う。視聴者の想定がなかなか難しいところがある。
  • ノモンハン事件については、最初、ディレクターが説明する場面を入れていたのを、プロデューサーが思い切ってカットした。戦争の資料映像はノモンハン事件もソ連の満州侵攻も残っているが、どちらも白黒でよく似ていて、混在してつないでいくとわかりにくくなると考えたため。

以上