第597回番組審議会は7月12日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。

〔委員〕
豊藏 亮 委員長、井野瀬 久美惠 副委員長、
道浦 母都子 委員、星野 美津穂 委員、
橋爪 紳也 委員、酒井 孝志 委員、
淺井 栄一 委員、高見 孔二 委員、
小松 陽一郎 委員、池内 清 委員

 

〔当社側〕
脇阪 聰史 社長、和田 省一 副社長、
松田 安啓 取締役、梅田 正行 取締役、
岩田 潤 編成局長、山本 泰弘 広報局長、
岩城 正良 制作局長補佐、
辻 史彦 プロデューサー、 戸石 伸泰 事務局長、
野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員

審議課題

「知ってるor知ったか? クイズ! バレベルの塔」
<事前視聴 6月16日(日)午後11時15分~12時10分放送>

番組の良かった点

  • 一時期バラエティのクイズ番組が、無知をからかって売り物にしていた時があった。テレビがどんどん変な方向へ行ってしまう、嫌だなと思っていた時に、この番組が登場したので、ものすごく好きな番組。
  • 挑戦者が芸人で、普段我々を楽しませてくれている人が、全然違う世界でも能力を発揮して、一芸に秀でるだけではなくて、二芸を持っていた。その驚きと新鮮さにアッと思った。
  • 単なるクイズ番組ではなくて、解答に際して語られるウンチクが非常に面白い。挑戦者のほっしゃん。さんは、表現力が豊かで、この番組のミソであるウンチクを語るところで非常に惹きつけられたし、「フクロウ」のような特殊なことをよく知っていると感心した。
  • ほっしゃん。さんの「フクロウの生き様が好きだ」「フクロウはシンプル」「なつかず、媚びず」「野生を捨てない」といった含蓄のある言葉が良かった。
  • この番組は、クイズの問題がキーになるのではないかと思った。簡単に「賢者」にしては駄目だし、かといってあまりコア過ぎる問題も盛り上がりに欠ける。今回は、そこがすごく面白かった。
  • 司会のロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが大阪芸人にはないスマートさだ。彼が大阪でレギュラー番組を持つというのは画期的だと思う。大阪で作られるバラエティで、大阪ベースで活動している芸人と組み合わされて、新しい展開が生まれること自体が挑戦的で新鮮。
  • 田村淳さんが司会で、ウンチクのある芸人を使うという点は、「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)と「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の良いところを組み合わせながらも、全く違う朝日放送ならではの番組になっている。
  • 最近のバラエティは番組タイトルにタレントの名前を冠することがあるが、田村淳さんを使いながら敢えてそれをしていないのが良い。有名タレントの名前に頼らない挑戦的な番組。
  • スタジオのセットにアドベンチャー感やワクワク感があって良かった。CG映像もうまく使って、クイズのレベルが上がっていく度に、通天閣のような塔を登っていく感じをうまく出していた。
  • 公開番組で、スタジオの周囲を視聴者が埋めていたのは臨場感があった。また、「オーディエンス」の雛壇の位置が下手(しもて)で、あまり段差がないというのは斬新。どこかで見たようなスタジオセットではなく、かなり工夫しているのが伝わってきた。
  • 実際のフクロウやミミズクをスタジオに連れてきたのが良かった。映像や写真だけなら飽きられたと思う。あれでガラッと雰囲気が変わった。しかし、5羽も連れてきてじっとさせておくのには大変な苦労があったのではないか。
  • レベル1でミスしたら、そこで終わり。その場合は2本分を合わせるのだろうが、ものすごく編集の腕が要る。若手ディレクターに、腕を磨かせるにはものすごく良い番組。
  • エンディングロールに、スタッフが自称している「賢者」の内容が載る。「嫁」と書いている人もいて、「嫁賢者」を見たいと思った。こんな遊び心が、この番組を面白くしていると思った。

番組の課題

  • 毎回マニアックなテーマなので、そのマニアック度合いがどうなのか、一般視聴者にもう少しわかると良い。1億2千万人中、何人がそのことに興味や関心を持っているのかについて興味や関心がある。
  • 課題番組の翌週は、テーマが「スラムダンク」だったが、視聴者によっては全くわからないので見ないと思う。「フクロウ」や「新幹線」なら何かしら共有できるが。誰をターゲットにするのかを考えて、テーマ設定に工夫して欲しい。
  • 良い時と悪い時とが極端に出る。芸人やタレントとテーマや知識をどのように組み合わせるかが重要な課題。「重機」がテーマの時は非常に面白かった。普通は、そんな発想にならない。「柔道」や「釣り」などの普通のテーマに加えて、「フクロウ」や「重機」などをボンボンぶつけて欲しい。
  • 芸人やタレントとテーマや知識の組み合わせを面白いものにしようとすればするほど、一方でヤラセっぽく感じられてしまう危険性があると思った。
  • 「賢者」と認められるのは非常に名誉だと思うが、「賢者のバッジ」にそんなに値打ちがあるのかよくわからなかった。賞金を出すなど、もう少し讃えてあげて欲しいと思った。
  • シャンプーハットのてつじさんら「オーディエンス」は、最初に、ほっしゃん。さんが「賢者」になれるかどうかを予想するだけだったので、あまり活かされていないと感じた。「オーディエンスが」がいなければ寂しいと思うし、「オーディエンス」の使い方が宿題。
  • ほっしゃん。さんがウンチクを語るのは良いが、彼の説明に対して我々の理解がついていけないところがあって、ちょっと長すぎると感じた。
  • 例えばフクロウの羽の構造が新幹線のパンタグラフの防音のために応用されているウンチクの時に、何がどのように関係があるのか、パッと理解できなかった。あまりやると教育番組みたいになるので寸止めなのだろうが、もう少し説明されないとわからない。

番組制作側から

  • この番組は、今年1月に放送した特別番組が好評で、4月から日曜午後11時15分からのレギュラー番組になった。番組コンセプトは、「人間誰しも何か一つくらいこの分野だけは絶対負けないという知識がある。それが本物かどうかを審議しよう」というもの。
  • 挑戦者の芸人のブッキングと何をテーマに選ぶかは、「M-1グランプリ」などで培ってきた芸人とのネットワークなどを駆使して頑張ってリサーチしている。キャスティングとテーマがうまくはまることはなかなか難しく、毎回、我々の想定通りにならないが、予定調和がないという意味で、この番組は面白いと思っている。
  • 問題のレベルを下げて「賢者」を乱発するつもりはない。また、問題作成で気をつけているのは、ただ知識を問うようなものにはしないということ。挑戦者の知識を寄せ集めれば、推理によって必ず「賢者」に到達できるようにしようと心がけている。
  • 「オーディエンス」の役割は、挑戦者のウンチクに触れる度に引き込まれ変化していく観客の気持ちを代弁すること。「知ってる」か「知ったか」かを予想してもらうのも、レベルごとに予想が変わっていくのを見せるのが当初の狙いだったが、あまり頻繁に予想を変えても仕方がないので、今は最初の予想だけが残っているという形。
  • 最近は、雛壇芸人やVTRをひたすら見せるという番組が多い。この番組は、たまにVTRも出てくるが、基本的には使わない。今回のフクロウでも、実物をスタジオに連れてくるとか、写真だけで延々やるとか、そういうやり方が次のコンテンツを企画する時のヒントになれば良いと思っている。

以上