第594回番組審議会は4月12日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 脇阪 聰史 社長、和田 省一 副社長、 大塚 義文 常務取締役、 松田 安啓 編成・制作担当補佐、 梅田 正行 広報・スポーツ・リバーデッキ活性化担当補佐、 岩田 潤 編成局長、山本 泰弘 広報局長、 大島 尚 報道局長、藤田 貴久 報道企画担当部長、 西村 美智子 ディレクター、 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
テレメンタリー2013「風、吹かず~日本維新の会の落選者~」
<事前視聴 3月2日(土)午前6時~6時30分放送>
番組の良かった点
- 主人公の女性候補者の人間性がすごく出ていた。女性としては、化粧をしている姿とか、朝起きてすぐの姿などは見せたくないところだが、そういうところを撮影させていることからも、「全て私を見てください」という候補者の姿勢も見えたし、ディレクターへの信頼感もあったのだろうと思った。
- 難しい選挙取材で、ドキュメンタリーで、実名入りで、しかも家の中まで見せて、よくここまで中に入っていけたなと、すごく大変な取材だったろうと敬服した。そういう意味で、この番組は、1~2年生記者に、「取材って、ここまでやらなきゃだめなんだぞ」ということを説明するためのものすごく良いテキスト。
- 熱い思いで「(選挙に)出るんや!」という覚悟を持った主人公のたくましさが出ていた。落選後も「またやるんや!」という。「この人、すごいなあ」と感じた。こういうところから視聴者は勇気をもらったり元気になったりするのかと思った。
- 「政治家になりたい人の物語」ではないかと思った。だから番組としては素人の政治家の輩出について疑問を投げかけているのではないか。一主婦が政治家になりたくなって、「もしかしたらなれるかも知れない」というチャンスに乗ってしまった。「それはどうですか、これで良いんでしょうか?」というようなことを考えなさいという番組ではなかったか。
- 時系列に沿って、一人の候補者を追うことで、選挙戦の現場が「時間との闘い」であることを伝えたいという制作者の意図が良く伝わる番組。
- 選挙費用の5百万円の話は、日本で選挙に出ることが大変だとか、小選挙区制の問題とか、色々考えさせられた。そういう考える項目を、下敷きみたいなことを提示している番組で面白かった。
- 選挙の中で、維新旋風がどのようにして二大政党の争いに乗り込んでいくのか、維新の風がどこまで通用するのかというテーマを十分考えさせてくれたと思う。
- 放送が3月で、総選挙が終わってから間はあったが、アベノミクス効果や維新の会の動きなど、ずっと激動というか変化が続いているので、選挙から3カ月たった古い話という印象はなく、逆にタイムリーな番組という感じを受けた。
番組の課題
- 維新の会を伝えたいのか、選挙の素人というのを伝えたいのか判然としない。維新の会にフォーカスするのだったら、他の維新候補も描くなどしないと不十分。素人を描くのだったら、むしろ維新の会ではない素人を選ばないと、維新の会というフィルターがかかりすぎて、素人が選挙に出るということがわからない。二重の意味で意図が見えづらくなっていたのではないか。
- 主人公の女性候補者が何故維新の会から出馬したのか、どこでどう波長があったのか、彼女に風が吹かなかった原因は何か、わからない。あるいは選挙後、支部長を解任された政治の無情さをいいたいのか、維新の会をどのように解釈するかがわかりにくい。
- 主人公の女性候補者が出馬したいと思った理由などがすごく弱いと思った。どれくらい政治に魅力を感じているのか? 政治で何がしたいのか? 何をどう変えたいと思っているのか? 日常の中で政治的に「これはアカンやろ」と思っていることと出馬することにはかなり開きがある行動なので、その辺を知りたかった。
- ドキュメンタリーで、特に人間を扱うものは、それが良い人でも、変な人でも、悪い人でも良いのだが、とことん追いかけて、何かその人が動くということにならないと。ただ「急に出馬した人がいるのだけど、どう思う?」という話が淡々と流れているだけだった。
- 選挙戦をいかに立候補者が闘ったのかを描くのであれば、夫の言葉に加えて、スタッフやボランティアのインタビューもあればと思った。選挙の現場に無関心で政治批判ばかりしている、政治への参画意識の低い視聴者にも届く、リアルな言葉が得られたのではないか。
- 選挙費用として「5百万円が消えた」と強調しすぎている感じがした。政党の公認をとらない無所属の候補者は、選挙を闘うのに数百~数千万円を費やすのは当然。この候補者の事情を事実として報道しているのは理解できるが、間接的に政党に属さず立候補するのは大変なことだと訴えてしまったように思う。
- 市民が選挙に出たいという時の供託金が、実は日本は世界一高い。イギリスは8万円くらい、アメリカもドイツもフランスも、みんな0円。署名者がいたら良いことになっている。日本はどんどんつり上がっている。「国民が思い余って選挙に出たい時の供託金って何やろう」と、短くても問題意識を持って番組の中に取り入れて欲しかった。
番組制作側から
- 今回の総選挙で、維新の会の実態はこうなのだということを、報道機関として記録して提示する必要があった。色々ご意見が出たが、「何であの方なのか」を含めて、実像が出たのではないかと思っている。
- 選挙を扱ったドキュメンタリーは手法が難しく、今回は一つの挑戦だった。それがうまく果たせたかどうか、報道局内でも色々な意見が出た。ただ制作者として、こういうことに挑戦していくことは非常に大事で、選挙という難しいネタに果敢に挑む姿勢を評価したい。
- ドキュメンタリーというのは基本的に「人」が主人公。制作者として、人を見る力が問われるというのが、ドキュメンタリーの醍醐味であり、課題であると思う。今、若いディレクターや記者に「人間に対する興味がありますか?」といっている。インターネットで何でも情報が手に入るという時代に、「人」に注目し、今回の女性候補者のような人を取り上げてきた現場の努力は非常に良い教材になったと思う。
以上