第589回番組審議会は10月12日(金)に開かれました。出席委員と当社出席者は以下の方々でした。
〔委員〕
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〔当社側〕 渡辺 克信 会長、脇阪 聰史 社長、 和田 省一 専務取締役、田仲 拓二 常務取締役、 大塚 義文 取締役、松田 安啓 編成局長、 山本 泰弘 広報局長、 田中 徹 ニュース情報センター編集長、 矢島 大介 ニュース情報センターニュース担当部長、 藤田 貴久 ニュース情報センター次長、 吉原 宏史 ニュース情報センター報道課長、 戸石 伸泰 事務局長、野条 清 事務局員、 北本 恭代 事務局員 |
審議課題
東日本大震災から2年目の災害報道と原発報道全般について
震災報道について
- 震災報道は減っている。夕方のローカル・ニュース番組の特集枠で取り上げられるのも月に1回くらい。回数は減っても忘れさせないような仕掛けが必要では。例えばいつ報道するのか、スケジュールを決めるとか。個人的には義援金の行方が気になる。細かく継続して教えて欲しい。
- 震災1年などでの区切りの大番組よりも、ミニ番組でも良いから、もっと日常的に被災地の現状を伝えて欲しい。
- テレメンタリーという番組枠があるのだから、2カ月に1回でも、系列各局が交代で震災関連番組を作れば、非常にインパクトがある。
- 今回の震災報道のキーワードは「風化させてはいけない」「忘れない」「励ます」だと思う。「励ます」というのには、復興を通じて日本全体が元気になっていくことも含めて。多角的に、しかし、わかりやすく伝えて欲しい。
- 被災地のために特産品を率先して買うなどの小さなことも紹介し、このくらいだったら自分にもできるということを伝えるのも、ジャーナリズムの仕事ではないかと思う。
- デジタル放送の双方向性を生かすような、今まで展開してこなかったような手段や方法で新しい震災報道を切り開けないか。
- 放送の強みと限界をより意識した番組作りが良いのだろう。放送では、各地域の個別具体的なことをピンポイントで紹介することは難しいと思うが、テレメンタリー「天下人が恐れた大地震」などのような、グラフィクスやアニメーションを活用した、これまでにない歴史という切り口の番組は、テレビという器を充分生かした良い企画。
- 海外制作の東日本大震災番組を見ると様々な視点や角度から作られているが、国内メディアではどれも同じように見える。各局がもっと独自の視点を持つべきでは。そういう意味で「天下人が恐れた大地震」は、歴史と災害という朝日放送独自の視点があり、ぜひ継続して深めていって欲しい企画。
- 富士山が噴火するとか、近々東京に大地震がくるとか、風評に近いようなニュースが出回って、知らないうちに消えていく。確実な報道を切に願う。
- 今回の震災では、想定したマニュアルを超えたことが現場で多々起こった。マニュアルが一般論だとしたら、いたるところで個別特殊解が起こった。報道は、この双方を多くの人に伝えるべきではないか。
- 問題を羅列するだけでは国民は理解できない。メディアの基本的な役割の一つは、大局観をきちんと示し、その上で具体的な問題について国民の理解を深めるためにどういう手法を取るか工夫することだと思う。
- 日本社会全体が右肩下がりの時代の大震災であるという視点を持って報道して欲しい。特に物事を決められない政治に対して、報道は単に批判するだけでなく、前に進めるような世論形成の役割も担って欲しい。
原発報道について
- 従来想定外だったものも想定していかないといけなくなった。原発についても、「安全か、危険か」「賛成か、反対か」ではなくて、万が一にも事故が起こった場合の情報などを提示しながら、従来と違った枠組みの中で問題を伝えるような取り組みをして欲しい。
- 朝日放送として、あるいはANNとして、原発に対するスタンスを明確にすべき時期ではないか。電力業界との営業関係をどうマネージメントするかも含めた議論が必要になるが、これは民間放送の宿命。
- 原発に関して、本当にきちんと報道されているのだろうか。どれだけ真実に迫って報道されているのだろうか。特にテレビは、震災とか原発の問題を取り上げると、スポンサーがつかないのではないかと心配だ。
- 放送局はどこまで意見がいえるのかといつも思う。原発の再稼働などについては難しいだろうが、瓦礫処理の受け入れ反対問題では、放送局として「瓦礫処理しましょうよ」という問いかけをしても良いのではないかと思う。
番組制作側から
- 関西の視聴者が知りたいこと、知らせるべきことは何かということを日々考えながらやっていった結果、地域による温度差はどうしてもあるために、震災報道が減っていったという側面はある。ただ、今の大阪の内政でも震災や原発に関係するニュースは多々あり、それはしっかり伝えている。
- 阪神淡路大震災を経験した者としては、そのこだわりを持ち続けて取材している。風化させてはいけないという思いが一番強い。
- 大飯原発の再稼働問題の取材については、容認派だろうが反対派だろうが、色々な意見をきっちり聞いて出すという方針。特に地元の大飯町の住民たちについては、2カ月間民宿の一部屋を借り切り、記者が住み込みで取材を続けた。
- 今回の震災時、福島原発1号機の中にいた人に会い、「最初の地震でむちゃくちゃに壊れた」というインタビューをANNとして放送した。東京電力は、津波のせいで事故が起こったとしているが、本当にそうなのか。大阪にも原発の部品作っている特殊な業者がいる。そういうところを取材するなどし、自分で事実を突き詰めたい。
- 朝日放送として、今後どういう形で東北三県に貢献していくのか。特に今問題なのが福島県。福島は観光客が激減し、大被害を受けている。そういう中で、例えば「朝だ! 生です旅サラダ」で積極的に福島の状況などを伝え、報道とはまた違った部分での貢献をしていきたい。
以上