次世代へ今ある豊かさを手渡すために、
地域とともに持続可能な未来を
築いてまいります
朝日放送グループホールディングス株式会社
代表取締役社長
西出将之

私は、当社の経営に本格的に関わり始めてから、日々変化する社会と向き合いながら、「ABCの存在意義は何か」を問い続けてまいりました。そして今、私はその問いへの一つの答えとして、「持続可能な社会の実現に向けて、ABCグループができるすべてのことに挑戦する」という覚悟を新たにしています。経営として、単なる理念の掲示ではなく、実効性ある行動を強く推し進める決意です。
そのような覚悟を新たにした背景に、レベッカ・ヘンダーソン教授の著書『資本主義の再構築』※1を読んだことがあります。木々が身近な存在として育ち、深い愛情をもつ著者が、気候変動に関する本を兄に勧められ、木が常にそこにあることは不変な事実ではないと気づく。当たり前の風景が当たり前でなくなることへの驚きから、「次の世代に何を残すのか」という問いが生まれたというエピソードです。サステナビリティという言葉は、時に難しく感じられるかもしれません。しかし、私にとっては、とてもシンプルな想いから始まっています。それは、「今ある豊かさを、未来の世代に手渡したい」という気持ちです。
※1 レベッカ・ヘンダーソン著 『資本主義の再構築―公正で持続可能な世界をどう実現するか』(高遠 裕子訳) 日本経済新聞出版 2020年
信頼を築く土台
当社グループは放送事業を軸としながら、時代の変化に応じてそのフィールドを広げてきました。今もなお大規模災害が発生したときや、人々が正しい情報を手にするための手段として、テレビやラジオのもつ速報性やリーチ力は、非常に重要な役割を果たしています。たとえばテレビの個人視聴率1%は全国でおよそ100万人※2、関西エリアでおよそ20万人※3に同時に届くことを意味します。視聴者・リスナーの数という数字はまた、「どれだけの人が、私たちの発信する情報を求めてくださっているか」とも捉えることができます。信頼に足る情報を丁寧な取材と検証に基づいて様々な手段で届けること。これは、放送局として譲ってはならない使命です。
そしてその信頼の源は、情報の内容にとどまりません。当社グループで働く一人ひとりがどうあるべきか、その姿勢と行動そのものが、企業としての信頼の基盤を成します。情報発信を担う企業として、私たちは職場環境や組織のあり方においても、社会的責任を果たしていかねばなりません。企業としての誠実さと透明性が改めて問われていると、私は強く感じています。当社グループでは、人権方針による人権尊重の重要性の明確化や、内部通報制度・人権相談窓口の整備、コンプライアンス研修の強化などを進め、組織としての健全性を高めてまいります。人権とは、抽象的な理念ではなく、一人ひとりが安心して働ける、そして尊重される環境を築くことそのものであり、企業の信頼を築く「土台」だと考えています。
※2 全国の自家用テレビ所有推計人口より推計(出典:株式会社ビデオリサーチ)
※3 2025年1月時点住民基本台帳に基づく人口より推計(出典:総務省)
地域とともに、ウェルビーイングを創り出す
私たちは、長きにわたり地域社会と向き合い、人々の暮らしに寄り添ってきました。災害報道や生活情報の提供、地域との連携事業を重ねる中で築いてきた信頼こそ、ABCグループのかけがえのない資産です。
こうした地域との信頼関係の延長線上で、私たちは「ウェルビーイング(Well-being)」という新たな価値の創出にも取り組んでいます。その一例がライフスタイル事業のABC ライフィズが手掛けた「ウェルビーみのお」という新しい施設です。これまでの住宅展示場とは異なり、地域の人々の暮らしに密着し、自分らしく、健やかに過ごせる「ウェルビーイングな場所づくり」をめざす挑戦です。ABCらしいサステナビリティの形の一つであり、事業を通じて人と人、人と地域とのつながりを育み、ウェルビーイングを創り出していくことを、これからも追求してまいります。
未来に向けた経営へ
私たちは今、「インサイドアウト」と「アウトサイドイン」の両輪を強く意識しています。当社グループの理念や強みから未来を描くと同時に、外部環境や社会の声、ニーズや課題を把握し、両者のギャップを埋めながら進化していく姿勢が求められています。
このような時代において、事業を通じて大切にしたいのは、一方的に「届ける」だけではなく、視聴者・リスナー・生活者とのつながりや、信頼と共感を育むこと。つまり「エンゲージメント」を高めていくことです。発信するコンテンツやサービスを通じて人々と時間や感情を共有し、その方々により深く信頼され、愛され、結果として、人々の生活を少しでも良くしていく。そうした積み重ねが、私たちABCグループの存在意義をより確かなものにしていくのだと信じています。
企業が社会から信頼され続けるためにも多様なステークホルダーとともに価値を共創していくことが不可欠です。私たちは、新たに「地球の未来」をステークホルダーの一つに位置付けます。この視点をもつことで、あらゆる事業判断において、持続可能性と使命感を軸にした責任ある行動を徹底してまいります。
また、注力する分野として8つのマテリアリティを設定し、2024年度よりKPIと中期目標の運用を開始しました。これらのテーマは、経営戦略と密接に連動しており、持続可能な社会の実現に向けた当社グループの中長期的な方向性を示すものです。未来を見据えた持続可能な社会の実現には、多様な価値観をもつ人材が活躍できる環境と、地域とともに課題を解決していく力が不可欠です。グループ横断での人材育成や、地域と連携した取り組みを通じて、挑戦を続けています。また、コンテンツを通じた防災・減災への貢献や、環境負荷低減への取り組みも重要なテーマです。これらひとつひとつの実践が、次の世代に社会をつないでいくために必要な行動であると考えています。
自分らしく、よく生きられる社会のために
最終的に私たちがめざすのは、すべての人が「自分らしく、よく生きられる社会」です。これらは決して特別な理想ではなく、誰もが日々の暮らしの中で感じている大切な願いだと思うのです。社会の声に耳を傾け、自らの内なる使命と対話を重ねながら、ひとつひとつ行動を積み重ねていくこと。その誠実な積み重ねこそが、企業としての信頼を築き、将来にわたり必要とされる企業でいられる唯一の道だと私は信じています。
サステナビリティウェブサイトが当社グループのサステナビリティへの取り組みに対するご理解を深めていただく一助となり、今後の活動に対してご関心とご支援をお寄せいただけましたら幸いです。ステークホルダーの皆さまの変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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